第86悔 悪しき魔羅を滅する剣
文字数 2,152文字
前悔までの『ニュー・イェア!』は……。
『我恥無股 』に勝利し、トロフィーとしてのイヴァノフの“ポケット”をさっそく堪能するスピナッチは、その“五番目の季節”とも名付けた彼女のお女股に、後ろから遠慮なく中出しした!
しかし、その直後、彼の口に何らかの苦い液体が飛び込んで来た。
それは、まごうことなき彼自身のスペルマだった!
勝ったはずの試合は――負けて倒れる刹那 の間の夢だったのだ……。
.。:*+゜゜+*:.。.*:+☆
「恐らく、この勝負……どちらが勝つにしても一瞬で片が付くぞ!」
それは、インペリアル・ガードの矛先、クリム・バッツの予見どおりだった。
近衛騎士ヒューゴの試合開始の号令と共に、ふたりの肉剣士 が蹲踞 の姿勢から立ち上がった時――。
妄夢とスピナッチの肉剣のあいだに、無色の糸、透明な橋が架かった。
それがどちらの不耐性液 だったのかは判然としない。
同時に、会場内を爆発的な盛り上がりと地響きが襲った。それらに気を取られたのは、王者スピナッチだった。
その一瞬の油断――。それが、スピナッチにとっては命取りだった。
妄夢は、集中力を乱されることなく己の肉剣 を煌 めかせた。ふたりの間のリキッドを利用し、刀身を滑らせたのだ。
妄夢は、右斜め前方に飛翔しながら踏み出すと、猛りに猛った肉剣を薙いだ。
錯覚なのか、幻影なのか――あるいは、実際に伸びたのか?
妄夢の肉剣は、瞬間最大センチメートル五〇ほどの長さを記録したかに見えた。
サントーメが、そしてイヴァノフが証言したように、その「信じられないほど長い」一物がスピナッチの首横――頸動脈 のあたりを刈るように打ち付けた!
それは、先ほどスピナッチの『スピナチア』をかわす時に偶発的に繰り出すことが出来た技の進化版であり――まさに、実際の刀剣を用いて闘う際の居合切りを思わせた。
『我恥無股 』の歴史がどのくらい長いものなのかは定かではない。
だが、少なくとも過去に三千試合を闘ったと自称する我恥無股王者ですら、そんな技は見たことが無かったはずだ。
その証拠に、彼は全く反応できずに頸動脈を打たれた。
それにより、脳への酸素供給を強制停止させられた元一流剣闘士は、立ったまま瞬時に気を失い――肉剣、“道化”を握ったまま後ろへゆっくりと倒れた。
試合開始から二秒と経ってはいなかった。
試合に勝った妄夢は肉剣を斜め下に振り、イントレランス・リキッドを払った。
通路の床に透明な液体が散らばると、それまで押し黙っていた辺りの観客がさざめいた。
「……え? さっきから一体、何をやっているの? この人たち……」
観客にとってみれば、最初から最後まで徹頭徹尾、意味不明で理由不明の闘いであったことは間違いなかった。
新米宮廷詩人が自作の詩を披露したかと思った数分後には、『我恥無股』の決着がついていたのだから……。何が切っ掛けだったのか、観客たちは頭を抱えていた。
しかし、闘いを終えポーズを決めて佇むクリストフにとっても、それは信じられない試合だった。
やけにイキりたっていると思ったら“妄夢 ”のヤツめ! 今の技を繰り出したくて仕方がなかったんだな? それにしても驚いたな……今まで、最大勃起時三〇センチを誇っていた僕の“妄夢”だが――それでも充分デカいと言うのに――あの瞬間、五〇センチを優に超えていたんじゃないか? 何故だ!? 急に伸びて、硬度も増したんだ!
もしかして、これは……イサベラ様の『皇女股 』が発する光を超至近距離で直に浴びた影響じゃないのか?
だとしたら……これは一生、最大チン長五〇センチのままなのか? それとも一時的な効力に過ぎないのか? それが気になって仕方がない。その差は、あまりにもデカいぞ……。
クリストフが心中で独り言ちていると、妄夢の勝利を祝いに彼を“用心棒”の「先生」と仰ぐ近衛四騎士が駆け寄ってきた。
「先生の一物が信じられないくらい長く感じました!」、「あの技の名前は何ですかい?」
――名前! そうだ、さっきも技の名前を聞かれたんだった! ええっと……。
脳細胞を全力稼働させクリストフが言葉を絞り出す。
「左様、あの技こそは――この妄夢がマグアインブルグ門の下で編み出した……秘技――」
と、ここでサントーメの「信じられないくらい長く感じました」という褒め言葉にヒントを見つけた肉剣士 が、その言葉を反芻した。
信じられない……長さ……か。……そうだ!
「秘技――にして……悪 しき魔羅 を滅 する剣……。その名を――」
「その名を――?」と、カスティリョら四騎士が食い気味に答えを欲すると、妄夢は遂にかの必殺技名を明かした。
「――魔滅剣 ・信長 !」
イイ! 自分でも気に入った! とクリストフは内心で叫んだ。
「おお!」、「なんたる堂々とした必殺技名!」と近衛騎士の二人が声をあげると、インペリアル・ガード組も――これには恐れ入った、という表情で頷いた。
「魔滅剣 、信長 !」
念のために、出来る限りの低い声で威厳を漂わせてもう一度必殺技名を発表する妄夢の頭の先は、イントレランス・リキッドで土砂降りの雨の中だった……。
第86悔 『悪しき魔羅を滅する剣』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆
『
しかし、その直後、彼の口に何らかの苦い液体が飛び込んで来た。
それは、まごうことなき彼自身のスペルマだった!
勝ったはずの試合は――負けて倒れる
.。:*+゜゜+*:.。.*:+☆
「恐らく、この勝負……どちらが勝つにしても一瞬で片が付くぞ!」
それは、インペリアル・ガードの矛先、クリム・バッツの予見どおりだった。
近衛騎士ヒューゴの試合開始の号令と共に、ふたりの
妄夢とスピナッチの肉剣のあいだに、無色の糸、透明な橋が架かった。
それがどちらの
同時に、会場内を爆発的な盛り上がりと地響きが襲った。それらに気を取られたのは、王者スピナッチだった。
その一瞬の油断――。それが、スピナッチにとっては命取りだった。
妄夢は、集中力を乱されることなく己の
妄夢は、右斜め前方に飛翔しながら踏み出すと、猛りに猛った肉剣を薙いだ。
錯覚なのか、幻影なのか――あるいは、実際に伸びたのか?
妄夢の肉剣は、瞬間最大センチメートル五〇ほどの長さを記録したかに見えた。
サントーメが、そしてイヴァノフが証言したように、その「信じられないほど長い」一物がスピナッチの首横――
それは、先ほどスピナッチの『スピナチア』をかわす時に偶発的に繰り出すことが出来た技の進化版であり――まさに、実際の刀剣を用いて闘う際の居合切りを思わせた。
『
だが、少なくとも過去に三千試合を闘ったと自称する我恥無股王者ですら、そんな技は見たことが無かったはずだ。
その証拠に、彼は全く反応できずに頸動脈を打たれた。
それにより、脳への酸素供給を強制停止させられた元一流剣闘士は、立ったまま瞬時に気を失い――肉剣、“道化”を握ったまま後ろへゆっくりと倒れた。
試合開始から二秒と経ってはいなかった。
試合に勝った妄夢は肉剣を斜め下に振り、イントレランス・リキッドを払った。
通路の床に透明な液体が散らばると、それまで押し黙っていた辺りの観客がさざめいた。
「……え? さっきから一体、何をやっているの? この人たち……」
観客にとってみれば、最初から最後まで徹頭徹尾、意味不明で理由不明の闘いであったことは間違いなかった。
新米宮廷詩人が自作の詩を披露したかと思った数分後には、『我恥無股』の決着がついていたのだから……。何が切っ掛けだったのか、観客たちは頭を抱えていた。
しかし、闘いを終えポーズを決めて佇むクリストフにとっても、それは信じられない試合だった。
やけにイキりたっていると思ったら“
もしかして、これは……イサベラ様の『
だとしたら……これは一生、最大チン長五〇センチのままなのか? それとも一時的な効力に過ぎないのか? それが気になって仕方がない。その差は、あまりにもデカいぞ……。
クリストフが心中で独り言ちていると、妄夢の勝利を祝いに彼を“用心棒”の「先生」と仰ぐ近衛四騎士が駆け寄ってきた。
「先生の一物が信じられないくらい長く感じました!」、「あの技の名前は何ですかい?」
――名前! そうだ、さっきも技の名前を聞かれたんだった! ええっと……。
脳細胞を全力稼働させクリストフが言葉を絞り出す。
「左様、あの技こそは――この妄夢がマグアインブルグ門の下で編み出した……秘技――」
と、ここでサントーメの「信じられないくらい長く感じました」という褒め言葉にヒントを見つけた
信じられない……長さ……か。……そうだ!
「秘技――にして……
「その名を――?」と、カスティリョら四騎士が食い気味に答えを欲すると、妄夢は遂にかの必殺技名を明かした。
「――
イイ! 自分でも気に入った! とクリストフは内心で叫んだ。
「おお!」、「なんたる堂々とした必殺技名!」と近衛騎士の二人が声をあげると、インペリアル・ガード組も――これには恐れ入った、という表情で頷いた。
「
念のために、出来る限りの低い声で威厳を漂わせてもう一度必殺技名を発表する妄夢の頭の先は、イントレランス・リキッドで土砂降りの雨の中だった……。
第86悔 『悪しき魔羅を滅する剣』 おわり。:*+゜゜+*:.。.*:+☆