球技 その2 バスケットボール
文字数 1,866文字
「選手たちのシンクロ率はどのぐらいだ?」
「ほぼ完全ですね。思ったように仮装コートで活動できています。問題は人間の反射に通信が追い付けない部分ですが、AIによる補正が出来ています。あとの問題はリモートすぎることですね。データーのみを入れて仮想コートでのアバターのゲームであれば補正もなにも、ただ、情報の選択と予測でゲームの再現は出来ますが、このゲームは本人の判断、本人の反射、行動による仮想コートでのゲームになりますがから、うまく補正をしても、本人が思うようにプレーできてないと判断すると、つまり「納得できない」という感情が発生すると、仮想コートそのものが否定されます。つまり、仮想世界の成り立ちの判断をプレイヤーに託すことになります。」
「つまり、システムを造った我々ではなく、そこに立つ彼らが仮想世界の神になるってことだろう?それはね、ありえないから!彼らはただ、ボールを追いかけるだけだ。」
それから数か月、オリンピック本番の日を迎える。アメリカのバスケットボールの選手たちは同じ部屋で深くリラックスして眠っている。頭には特殊なヘルメットを被され、様々な電子デバイスが脳と交信する。脳波とは微量な電気であり、それを機械に取り入れることは可能となっている。脳のマッピングと電波の交信。WiFiでのデバイス接続のようなものだ。機具から電気信号を発信し、その反応で行動を決める。仮想のコートに意思が放り込まれた選手は、記憶と反射能力で肉体を手に入れることが出来る。走れば、手足に着けられたセンサーが、筋肉の動きを読み取り、その信号をモーションとして仮想コートに映し出す。動く意思がマッピングの範囲で行動につながり、重力と反力で計算されたボールが飛び交うチームのキャプテンであるアトキンソン選手は
「現実のバスケットボールより、ボールやコートがより鮮明に感じられる。それと不思議なことに体は動いてないが、疲れるんだ。あと気になるのが、一定なんだ。本当にプレーすると、体調と精神に波があって、動けないとき、動きすぎるときが出来るんだが、それが全くない。フラットなんだ。コートにある空気感とかそういったものかもしれないね。だってサイバー空間には風が吹かない。そこでするバスケットだから別物なんだ。でも試合にはなっている。サイバスケットとでもいえばいいかな?」
といったコメントを残している。開発チームのジョンはそのコメントに対して
「サイバー空間でのバスケットボールが現実世界と同じように出来ることは不可能だが、サイバー空間でのバスケットゲームも本物に違いない。生きた選手が場所を変えて、姿を変えて、その能力を発揮しているからね。ゲームそのものを選手たちが創造しているんだ。ただ疑似体験できるバーチャルリアリティーより大きく進んだ革新的な技術なんだ。」
バスケットのオリンピック競技は通常十二チームで行われるが、今回は6チームでの参加となっている。予算の関係で機材が6セットしか用意できないと言われていたが、実のところは人間の身体ともにスキャン出来る最先端の装置を全世界に設置することは危険である。もし奪われたりでもしたらシリコンバレーにとっての損害は大きなものである。よって参加はアメリカ、スペイン、ソビエト、ユーゴスラビア、アルゼンチン、フランスの6か国となった。会場はアメリカ、ソビエト、フランスの3か所に絞られ、選手たちは移動した。ソビエト、フランスの機材はアメリカの空母に設置され、寄港して選手を招き入れた。物々しい警備の中、選手たちは眠らされた状態で空母に載せられ、軍事用の世界一速い通信施設の電波を通して仮想コートに降り立つ。
第一試合はアメリカとアルゼンチンである。両チームの選手一同はカルフォルニア州、シリコンバレーの一室で隣り合わせに眠っている。監督も眠りに入り、仮想コートのベンチ入りしている。ちなみにアルゼンチンは1950に行われた第一回世界選手権の優勝チームでもある。サイバスケットの第一回ともいえる今回のリモートオリンピックでも優勝を狙いたいところ。チームはスピード重視の攻撃型チームである。勢いに乗ると手が付けられない。キャプテンのルイスは全方向が見えていると言われるぐらいの視野の広い選手だが、仮想コートでも、その能力が発揮できるかがカギとなっている。アルゼンチンはサイバー空間でのゲームはこれが初めてである。アメリカは何度かテスト試合をしている。これに関してアルゼンチン側は「不公平である」と抗議した。
「ほぼ完全ですね。思ったように仮装コートで活動できています。問題は人間の反射に通信が追い付けない部分ですが、AIによる補正が出来ています。あとの問題はリモートすぎることですね。データーのみを入れて仮想コートでのアバターのゲームであれば補正もなにも、ただ、情報の選択と予測でゲームの再現は出来ますが、このゲームは本人の判断、本人の反射、行動による仮想コートでのゲームになりますがから、うまく補正をしても、本人が思うようにプレーできてないと判断すると、つまり「納得できない」という感情が発生すると、仮想コートそのものが否定されます。つまり、仮想世界の成り立ちの判断をプレイヤーに託すことになります。」
「つまり、システムを造った我々ではなく、そこに立つ彼らが仮想世界の神になるってことだろう?それはね、ありえないから!彼らはただ、ボールを追いかけるだけだ。」
それから数か月、オリンピック本番の日を迎える。アメリカのバスケットボールの選手たちは同じ部屋で深くリラックスして眠っている。頭には特殊なヘルメットを被され、様々な電子デバイスが脳と交信する。脳波とは微量な電気であり、それを機械に取り入れることは可能となっている。脳のマッピングと電波の交信。WiFiでのデバイス接続のようなものだ。機具から電気信号を発信し、その反応で行動を決める。仮想のコートに意思が放り込まれた選手は、記憶と反射能力で肉体を手に入れることが出来る。走れば、手足に着けられたセンサーが、筋肉の動きを読み取り、その信号をモーションとして仮想コートに映し出す。動く意思がマッピングの範囲で行動につながり、重力と反力で計算されたボールが飛び交うチームのキャプテンであるアトキンソン選手は
「現実のバスケットボールより、ボールやコートがより鮮明に感じられる。それと不思議なことに体は動いてないが、疲れるんだ。あと気になるのが、一定なんだ。本当にプレーすると、体調と精神に波があって、動けないとき、動きすぎるときが出来るんだが、それが全くない。フラットなんだ。コートにある空気感とかそういったものかもしれないね。だってサイバー空間には風が吹かない。そこでするバスケットだから別物なんだ。でも試合にはなっている。サイバスケットとでもいえばいいかな?」
といったコメントを残している。開発チームのジョンはそのコメントに対して
「サイバー空間でのバスケットボールが現実世界と同じように出来ることは不可能だが、サイバー空間でのバスケットゲームも本物に違いない。生きた選手が場所を変えて、姿を変えて、その能力を発揮しているからね。ゲームそのものを選手たちが創造しているんだ。ただ疑似体験できるバーチャルリアリティーより大きく進んだ革新的な技術なんだ。」
バスケットのオリンピック競技は通常十二チームで行われるが、今回は6チームでの参加となっている。予算の関係で機材が6セットしか用意できないと言われていたが、実のところは人間の身体ともにスキャン出来る最先端の装置を全世界に設置することは危険である。もし奪われたりでもしたらシリコンバレーにとっての損害は大きなものである。よって参加はアメリカ、スペイン、ソビエト、ユーゴスラビア、アルゼンチン、フランスの6か国となった。会場はアメリカ、ソビエト、フランスの3か所に絞られ、選手たちは移動した。ソビエト、フランスの機材はアメリカの空母に設置され、寄港して選手を招き入れた。物々しい警備の中、選手たちは眠らされた状態で空母に載せられ、軍事用の世界一速い通信施設の電波を通して仮想コートに降り立つ。
第一試合はアメリカとアルゼンチンである。両チームの選手一同はカルフォルニア州、シリコンバレーの一室で隣り合わせに眠っている。監督も眠りに入り、仮想コートのベンチ入りしている。ちなみにアルゼンチンは1950に行われた第一回世界選手権の優勝チームでもある。サイバスケットの第一回ともいえる今回のリモートオリンピックでも優勝を狙いたいところ。チームはスピード重視の攻撃型チームである。勢いに乗ると手が付けられない。キャプテンのルイスは全方向が見えていると言われるぐらいの視野の広い選手だが、仮想コートでも、その能力が発揮できるかがカギとなっている。アルゼンチンはサイバー空間でのゲームはこれが初めてである。アメリカは何度かテスト試合をしている。これに関してアルゼンチン側は「不公平である」と抗議した。