アーチェリー、射撃

文字数 1,533文字

「そもそもアーチェリーとかクレー射撃、する必要があるのだろうか?」
 「今までやってきたし、それに打ち込んでいる選手も世界中にいます。」
 「まあ、決まっているから仕方ないか。でも、今後どうするかだよな。」
 「といいますと?」
 「誰が見ている?たぶんこの競技、テレビでしないやつだよ。やっても深夜。」
 「それは日本だけで、ヨーロッパでは人気があります。」
 「ヨーロッパにどれだけ人がいる?アジア、アフリカの人口比が上がってるじゃないか。白人の道楽みたいな競技を歓迎する状況ではないよね。日本の選手だって、ずっと同じ人が二十年ぐらい出てたじゃないか。若い人が出てこないってことは、それだけやる人がいないんだよ。クレー射撃は中止したいな。だいたい銃はいかんだろ?」
 「たしかに日本の射撃の競技者人口は十万人ぐらいですが、これも歴史ある競技ですよ。」
 「ヨーロッパの鳥打、貴族の遊びだろう?死に物狂いで走ったり飛んだりするのと違うじゃないか、集中力はたいしたもんだろうけど、こんなの許してたからテレビゲームもオリンピック競技になるんだよ。でもEスポーツはありだな。競技者人口が多い。何十億の競技者人口で、子供が多いから、盛り上がる。時代は変わったってよくわかる。」
 「でも、今回は決まっているので、それにもう始まってます。」
 「知ってるよ。だが、言いたいんだ。俺らのやってる競技が、簡単になくなって、人気もないような、どうでもいいのが残ったんだ。それが悔しいんだ。」
 「仕方ないじゃないですか、もともと人気がなかったし、絶対リモートじゃできない競技ですから。」
 「でも、アーチェリーよりマシだ。クレー射撃よりメジャーだ。次の大会があっても、俺はピークが過ぎている。代表になれない。こんなの有りか?」
 「だからといって、他の競技をくさすのもスポーツマンじゃないですよ。気持ちは分かりますけどね。人生かけて頑張ってましたからね。でも、その経験は何かに生きると思いますよ。」
 「他人事だね。俺のやってる競技が、人生で役に立つことなんて絶対ない。あれは生活と一万光年ぐらい離れている。だから好きなのに。くやしいな。」 

 アーチェリー競技が始まった。ランキングラウンドはデータのみでの集計で競われ、一対一のトーナメントのみの競技となる。本来なら対戦相手と交互に同じ場所で矢を放つ緊張感があるのだが、まったく違う場所の相手とモニター見ながらの対戦となるので、競技者は、何が別の競技をさせられているような気分になっていた。また最悪なことに、演出上、対戦者がどこに矢を当てたか表示された方が盛り上がるだろうと、競技を知らない代理店が勝手に当たった矢を的に表示させたために、選手たちは混乱した。表示されたら、どうしてもその跡を意識してしまい、大事な集中力が削がれてしまった。結果、盛り上がらないままグダグダに競技が終わってしまった。
 クレー射撃はアメリカの大統領が変わってしまったので、銃を映さず選手の顔と当たった的を交互に映すヘンテコ編集のせいで、見ているほうは全く面白くなかった。ただ、競技者には全く影響はなかったようで、無事競技は終わった。
 
 「他にもあるよな、俺のやってる競技より、マイナーで盛り上がらない奴。オリンピックでやってるから、スポーツとして認められているけど、オリンピック競技じゃなきゃ、すぐになくなるような競技、あるよな。この先どうするんだろう?ってか、オリンピックって必要なのか?」
 「要りますよ。競技者がいる限り。ただ、ビジネスとしては曲がり角に来てますね。今回みたいにボランティア集めてリモートでやるならちょうどいいと思います。」
 「どう考えても失敗じゃないか。」
 
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