球技 その1

文字数 1,496文字

 リモートオリンピックとなった今回の大会、球技はさすがに難しいと議論されたが、テニスは開催されている。もともと選手同士はリモートになっているし、世界中で人気もある。会場は軽井沢。会場から半径五十キロメートルほどが半年前から封鎖され、世界各国の選手たちは早くから軽井沢に集まった。また、観客も現代の貴族ともいえる特別な富裕層のみが、一時入居保障金を支払い、半年間移動しないことを前提に軽井沢に入れた。富裕層たちは自然豊か、真夏でも暑くもない、心地よい軽井沢をたいそう気に入った。また、保証金で通信回線が強化され、リモートの仕事は全く問題なく、富裕層が集まるので、新しいビジネスも生まれた。その恩恵からか、ビジネス富裕層から多額の寄付も多く集まり、活況である。また、ゴルフも軽井沢で開催されている。同じく好評。ついでに財政的に大変潤い、世界的に有名になった長野県は首都移転の候補となる。景観が人気なので地上ではなく、厚みのある地下に政府の基幹を用意する。すでに掘削工事が始まっている。同時に横穴も東京に向けて掘られていく。リニアトレインを通すのだ。

 野球、サッカーは中止となった。プロ選手の契約問題により移動が無理なのだ。アマチュアのみでの開催も検討されたが、接触があると言い訳で、無事中止となる。ヨーロッパのクラブチーム、メジャーリーグ球団も不毛なやり取りから解放されてほっとした。どうせなら、永久にオリンピックから解放されたかった。

 他の球技、バレーボール、ハンドボール、バトミントン等は、はほぼ中止。だが、アメリカの要請でバスケットボール、中国の命令で卓球は行うことになった。卓球は沖縄の離島での開催。島は中国資本で買い取られ、最新の設備でコロナ対策は万全。選手は二か月前に入島し、撮影は無人。観客もないが、選手の希望で会場の壁に映し出される。デジタルトランスフォーメーションの極みとなっている。電波基地局も設置され、管理も中国の軍艦が巡回している。日本政府は抗議したが、オリンピック委員会の指示もあり、仕方がないからとそれに乗っかる。余談だが、三年後沖縄は新琉球王国と名称を変更し、その三年後、中国の自治区になる。
 卓球の会場はアジア人ばかりだった。多くの白人国家は卓球を棄権した。どうせ勝てないし、ピンポン人気もそれほど無い。
 卓球島と名付けられた離島の卓球の会場施設では、空調、気圧、風圧などすべて計算され、飛び交う球に影響が全くない世界一公正な卓球会場となっている。その空調制御は選手からも球の軌道が思うようになるので、おおむね好評である。また、外に出ると美しい海が広がり、極端に寒くなることもない。宿泊施設も最新、衛生面でも完全。また、卓球関連企業も出資、進出しており、卓球に関することはすべてそろう。まさに卓球の楽園となっている。
 ただし、問題がないわけではない。卓球のオリンピックゲームのはずだが、中国の卓球リーグ戦の一部としてプログラムが組まれている。つまり、オリンピックは中国による卓球世界戦の大会の一部という位置づけになっている。中国の選手は年間の大会に組み込まれたオリンピックゲーム、来年は卓球島大会の名称となる。中国の卓球リーグに所属してない選手はゲスト扱いになるが、パンデミックからの二年間で、試合、大会もなく行き先を失った世界の卓球選手たちは、活況で大金行きかう中国リーグに参加した。卓球に関してはすべて中国のものとなった。プロスポーツ選手での扱いも卓球の地位は年々向上している。オリンピック大会の様子は、普通に色々な選手が卓球をして、中国が優勝するという内容。
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