(40)地球の破壊と、新天地を探す旅

文字数 1,153文字

「計画通りだ、予定と寸分違いはない」
ロボット立花隼人の怜悧な声が(地球を周回する)宇宙船に響いた。
モニターには、真っ赤に燃える地球が映っている。

「お父様の計算通りになりました」
ロボット九條紀子が可愛らしい顔で、壊れゆく地球を見つめている。

ロボット立花隼人は続けた。
「立花昇一の進言を真面目に聞いていれば、地球も破壊されることはなかった」

ロボット九條紀子は、頷いた。
「確かに、この宇宙船から核爆弾を発射していれば、惑星衝突後の残骸軌道の変更は、十分に可能でした」

ロボット立花隼人。
「しかし、愚かな日本政府と、その後ろ盾のアメリカ政府は、何も聞かなかった」
「地球を守ることよりも、ロボット立花隼人を、単なる原子力ロボットとして使うことにしか、考えが及ばなかった」
「要するに、世界に覇権を持つための、軍事兵器、核爆弾の一つとしか理解しなかった」
「そして、ロシア軍や人民軍による先を越されての簒奪を恐れ、ロボット立花隼人だけを手に入れた」
「しかも、新たな原子力ロボットの製作を恐れ、立花昇一を殺してしまった」
「それも、新たな原子力ロボットを万が一にも、ロシア軍や人民軍に渡さぬためだ」

ロボット九條紀子はクスッと笑った。
「私が先に武蔵野学園に潜入していることも、見抜けませんでした」
「私も原子力ロボットなのにね、調査不徹底です」
「そのように人間のやることは、必ずミスがあります」
「そんな理解力でありながら、結局、地球人は、自分の目先の利益と安全にしか、興味が無いのです」
「地球全体の利益、幸福、安全より、私益を常に優先します」
 「政治の世界、経済の世界、細かな人間関係でも同じです」

モニターに映る地球は、一旦、赤く巨大に燃え上がり、そして爆発、その姿を消した。

ロボット九條紀子が、ロボット立花隼人に声をかけた。
「では、旅を始めましょう、新天地に」
その腹部に手をやり、微笑んだ。
「この子のためにも、安全な新天地に」

ロボット立花隼人も微笑んだ。
「立花昇一と、その助手九條茜の凍結受精卵が内蔵されている」
「しかも男女の双子だ」
「新天地で、しっかり育てよう」

ロボット九條紀子が笑った。
「私たちの稼働可能期間は5000年、その期間内には新天地が見つかります」
ロボット立花隼人は、九條紀子の言葉を訂正した。
「稼働可能期間の5000年は、地球の重力を受けた上での計算だ」
「無重力の宇宙空間では、無限の長さになる」
(ロボット九條紀子は頷いた)

ロボット九條紀子が、操縦桿を握った。
「では、銀河系から出ますか?」
ロボット立花隼人は頷いた。
「思い切り遠くに」

ロボット立花隼人、(地球人の凍結受精卵を内蔵した)ロボット九條紀子を乗せた宇宙船は、目にも止まらぬ速さで、銀河系の向こうに姿を消した。


                    (完)
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