(38)ロボット二体からの警告

文字数 1,389文字

松本華奈は、(彼女なりの)ありのままを、公安の上司にスマホで報告した。
「ロボット二体が、極左テロ団体の皇居爆破阻止をしようとしていたので、私は上司に相談も、ましてや許可もない段階なので、OKを出さなかったのですが」
「ロボット二体は、例の惑星衝突の残骸の地球衝突のヨタ話を持ち出して、逆ギレ」
「あっという間に、空を飛んで行ってしまいました」
「空中飛行機能があるなんて知りませんでした」

上司の上司は、少し慌てた。
「空中飛行だと?それは、知らなかった」
「立花昇一の設計書にも未記載だった」
「もしかすると、設計書そのものが、完全に残されてはいない懸念もある」
「ただ、極左テロ団体のテロ阻止については、松本の判断でいい」
「事前阻止は、官邸が難色を示すし、許可も出さない」
「あくまでも、国会対策上のカードに過ぎない」
「重要法案や予算案審議の際に、野党が強い抵抗を見せた場合の、脅しカードだ」
「テロで人が死んでも、それは官邸の意を受けた結果に過ぎない」

上司への報告を終え、松本華奈は、そのまま、公安の事務所に戻った。
(周囲が、少しは慰めてくれるか、との傷心の顏だった)
しかし、誰も松本華奈を見ない。
ザワザワとしながら、大きなモニターを見ている。

上司が、(立ち尽くしていた)松本華奈を手招きした。
「モニターを見ろ・・・まさかだ」
「これから、全世界放送するらしい」

松本華奈は、モニターを見て、目を見開いた。
まるで宇宙船の操縦室のような設備が映っている。
その椅子に、ロボット立花隼人と、九條紀子が座っている。
そのロボット二体が、口を開いた。

立花隼人
「今、我々は、地球上空にいる」
「この宇宙船は、日本政府と米軍に暗殺された立花昇一と、我々で極秘開発したもの」
「秘密基地の八ヶ岳から飛んだ」
九條紀子
「以前にも警告した通り、地球は宇宙空間における惑星衝突、その残骸が地球に落下することにより、四週間後には、破壊されます」
「残念ながら、ピンボケの日本政府、地球上の覇権争いにしか興味を持たないアメリカ政府や中国、ロシア政府には、何の期待もできません」

立花隼人
「我々二体は、原子力で動くロボットだ」
「そもそも、地球が滅びようが、その結果、人間が絶滅しようが、何の憐れみも持たない」

九條紀子
「この惑星衝突は、実は立花昇一が、事前に予測して、各国政府に警告をしてあったことです」
「しかし、各国政府は、自国内の政権闘争や、他国との覇権争いだけしか、興味が無い」
「見事に無視され、今の結果をもたらしました」

立花隼人は、その表情を厳しくした。
「我々が、宇宙空間で、特定の対策を実行すれば、惑星衝突の方向をずらす、そして地球を無事に保つことも可能だった」
「しかし、今となっては、その特定の対策は、実行しない」
「我々は、むしろ、地球の破壊を選択し、むしろその時期を早める」

九條紀子が笑った。
「これから人間は、自暴自棄に、自堕落に、大混乱に陥るでしょう」
「地球の壊滅を知りながら、戦争を起こし殺し合う」
「最後の贅沢を求めて、略奪の横行」
「レイプ、殺人が、あちこちで起こります」

モニターの画面は、そこで切れた。
松本華奈が、公安の仲間を見回すと、普通の業務に戻っている。
「馬鹿馬鹿しい、マジに」
「どこかの迷惑系?」
「私、お昼は、A定食にする」

上司も、自分の席に戻った。
「はい、先生、了解しました」(誰か政治家と連絡を取っている)
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