(23)ホテルロビーにて

文字数 1,227文字

朝食はホテルのレストランにて。(アメリカンブレックファストの簡単なもの)
ただし、内閣官房の指示により、個室で済ませた。
広いロビーを歩きながら松本華奈が(少し赤い顔のまま)、ロボット立花隼人に話しかける。
「昨日と同じように、朝7時30分にメトロに乗っていただきます」
(松本華奈としては、通常の連絡と思った)
(そのため、ロボット立花隼人も、素直に頷くと思っていた)

しかし、その割に、立花隼人の顏が厳しい。
ロビー全体を見回している。

これには、松本華奈も不安になった。
「どうかしたの?早くしないと学校に遅刻しますよ」

立花隼人は、小さな声。
「あそこに座る三人」
「日本人二人が、武器企業の三友重工の営業マン、その隣が私服を着ているが自衛隊の武器弾薬保管担当」
「会話の内容と胸のバッジで確認した」
「日本人二人の前に座る東欧系の顏の外国人が、ロシア語を話している」
「国際テロリストで、いわゆる国に属する軍人ではない」
「いずれにせよ、テロ関係の危険な男だ」
「日本の自衛隊は、国際テロにも協力するのか?」

松本華奈の顏も厳しいものに変わった。
同じようにロビーを見回し、問題の三人を見た。
「公安も、数人監視しています」
「おそらく、何かあれば、すぐに対応するかと」

自衛隊のバッジを付けた男が、タブレットを取り出した。
指をその画面にタップし、いろいろ説明を行っている。
また、その捕捉を三友重工の社員が行っている。
東欧系国際テロリストも、身を乗り出しながら、指を二本、または三本と立てている。

立花隼人は厳しい顔だ。
「価格交渉が始まった」
「いわゆる武器転売」

松本華奈が、二歩、三歩動いた時だった。(他の公安への情報伝達を意図したようだ)
立花隼人が、その動きを制止した。
「やめろ!動くな」

「どうして?」
松本華奈が、立花隼人に聞き返した瞬間だった。

東欧系国際テロリストが、突然立ち上がった。
胸ポケットから、ピストル形状のものを取り出し、周囲のロビー客(公安も含めて)威嚇したのである。

立花隼人は、その東欧系国際テロリストと、ピストル形状のものを凝視した。
「神経性ガスだ」
「おそらくサリン系のガスを発射するらしい」
「この段階では、公安では歯が立たない」

「え?じゃあ!どうしたら?」
松本華奈が絶望にくれた瞬間だった。

ロボット立花隼人が、稲妻のような動き。
瞬時に東欧系国際テロリストを殴り飛ばしてしまった。
と、同時に、ピストル形状のものが、ロビーに転がった。

他の公安が、驚いた顏で、全員駆け寄って来た。
立花隼人は、その公安たちに説明した。
「この三人を捕縛、取り調べて欲しい」
「自衛隊は、自衛隊が保有する武器横流し」
「三友重工は、武器の無許可転売」
「それから、殴り倒した東欧系国際テロリストは、サリン銃を持っていた」
「ロビーでの会話は、全て録画済み、官邸と防衛省に送付した」

松本華奈が、「この少年が立花隼人である」ことを、公安の同僚に説明した。
公安たちは、一様に感服した表情、深く頭まで下げている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み