(36)極左テロ集団と官邸

文字数 1,636文字

ロボット立花隼人と九條紀子は、結局靖国神社に参拝をしなかった。
政府公用車にも乗らず、靖国通りを歩いて行く。
(松本華奈は、一連の騒動で、肝を冷やしているので、トボトボと後ろを歩くのみ)

数百m歩いた時点で、立花隼人が、突然振り返った。
「松本さん、落ち込んでいるの?」(珍しく可愛らしい顏だ)

松本華奈は焦った。(やばいくらいに、ドキッと胸が揺れた)
「だって・・・」(あなたたちのせいでしょ?が言えない)(ロボット二体の功績は大である)

立花隼人は、さわやかな笑顔だ。
「お手柄を立てさせてあげようか?」(松本華奈は意味不明なので、返事が出来ない)
九條紀子が、立花隼人を補足した。
「さっきの中国人団体の黒幕のアジトを特定しました」
「すぐそこのマンション・・・最近買ったばかりかな」
「手引き書を作ったのも、彼ら極左系」

松本華奈は、「アジト」で、今度は身体全体がブルッと震えた。
「極左系の新アジト?」
(松本華奈も、警視庁公安部所属、ほとんどのアジトを推定しているが、靖国神社至近の新アジトは、知らなかった)
(公安の上層部も、把握していない、あるいは秘密にしているかもしれない)

※極左暴力(テロ)集団は、社会主義革命・共産主義革命を目指し、平和な民主主義社会を
暴力で破壊することを企てている集団。(警察庁公表のサイトより)
極左暴力(テロ)集団は、昭和30年代初頭、日本共産党から独立。(除名や離党)
街頭で火炎びん、鉄パイプ等の武器を使用した暴力的な行為を繰り返してきたほか、基地、皇室及び成田空港建設等に反対し、民間人を巻き込む凶悪な「テロ、ゲリラ」事件を引き起こすなど、市民生活を混乱させ、日本の治安に大きな影響を及ぼして来た。
極左暴力(テロ)集団は、現在も依然として「テロ、ゲリラ」事件を敢行する一方で、周囲に警戒心を抱かせないよう、暴力性・党派性を隠しながら大衆運動や労働運動に介入するなどして、組織の維持・拡大をもくろんでおり、勢力は約2万人。
主なセクトとしては、
●革マル派:勢力は約5,500人。警察や対立する団体、個人等に対し、住居侵入、窃盗、電話盗聴等の違法行為を伴う調査活動を敢行している。
●中核派:昭和38年2月に革マル派と分裂し発足し、勢力は約4,700人。
過去には数多くの「テロ、ゲリラ」事件を敢行した。
※ 平成2年、「90年天皇決戦」を主張して1年間に124件の「テロ、ゲリラ」事件を敢行した。国鉄闘争を基軸に、反原発闘争等を中心とした闘争を継続し、組織の維持・拡大を企図している。
●革労協:昭和44年10月発足。勢力は約500人。「成田闘争」、「反戦、反基地闘争」等多くの「テロ、ゲリラ」事件を敢行した。

立花隼人は、頷いた。
「そこに野党の元代表が出入りしている」
「かつては内閣の重責を担った時期もあったが」
「その期間も含めて、政治献金を継続して受領している」
「今回の靖国神社襲撃未遂も、絡んでいる」

九條紀子が松本華奈を見た。
「政治家に弱いからね、日本の官僚は」
「自らの保身のためには、国民の命でも簡単に捨てる」
「だから、情報を掴んでいても、動かない」
「とにかく、事なかれ主義」
「官邸は大事件が起きても、後始末のみ」

嫌味を言われ続け、松本華奈は、懸命に考えた。(ロボット二体の言葉の裏を読んだ)
「要するに、極左は中国人を使っての、靖国への嫌がらせに失敗した」
「そのままでは、仕組んだ政治家も、非難される」
「メンツにかけても、次の皇居爆破を計画するかもしれない」
「そのテロを阻止する手柄を私にくれるの?」
「でも、どうやって、阻止するの?」

考え込む松本華奈に、立花隼人の厳しい声が飛んだ。
「新アジトの監視カメラシステムに、侵入している」
「しっかり元代表の顏とテロの指示音声もある」
「そのままテロが実行されれば、皇居は吹っ飛ぶ」
「皇室だけではない、多くの参観者も死亡する」
「それを見殺しにするのか、あるいは事前に阻止するのか?」

九條紀子は、松本華奈の表情をじっと見ている。
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