(25)もう一人(一体)のロボット美少女 九條紀子

文字数 1,276文字

「隼人さん、おはよう!」
武蔵野学園の制服を着た超美少女は、まず、立花隼人と笑顔でハイタッチ。
「うっ・・・」とその若さと美少女度の高さに気後れした松本華奈に頭を軽く下げた。
「九條紀子と申します」

松本華奈は(気後れのまま)
「あ・・・公安の松本です」と、身分証を呈示する。

ロボット立花隼人が、簡単な説明を行った。
「九條紀子も、実はAIロボット」
「エンジンは、同じく原子力エネルギー」
「開発者は、立花昇一工房の弟子、名前は明かせない」

松本華奈は、何も知らされていなかったようで、さっそくスマホで上司に確認を取った。
「あの・・・別のロボットが・・・マジです?」

(スマホから、上司の声が漏れて聞こえる)
「立花隼人の意向を、首相が飲んだ」
「政府も、我々公安上層部も、把握していなかった秘密ロボット」
「しかも、立花隼人より先に、武蔵野学園に入学していた」

上司の「立花隼人より先に、武蔵野学園に入学していた」の言葉通り、ほとんどの登校する生徒が、九條紀子と「おはよう」と挨拶を交わし、通り過ぎて行く。

松本華奈が、あまりのことに「うーん・・・」とうなった時だった。

ロボット九條紀子が、いきなり立花隼人と腕を組んだ。
「行きましょう、隼人さん」
「それでは、松本のオバサンは、どこへでも」
(ほぼ、見下すような、挑発するような表情)

松本華奈は、ムッとした。
「あのね、私にも、公務があるの、政府の指示なの」(それは建て前、ロボットとはいえ、小娘にオバサンと言われたことが癪に障った)


ただ、本来の警護対象の立花隼人は、九條紀子と腕を組んだまま(松本華奈を完全無視で)歩きだしてしまった。

(ロボット同士の会話)
「隼人と同じクラスに入ってもいい?」
「面倒では?」
「人間女子の垢をつけたくないの」
「確かに臭いな、香水の付け方もひどい」
「ホテルも一緒の部屋にして」
「かまわない、オバサンは帰宅させよう」
(松本華奈は、度重なるオバサン発言で、いらついている)

クラス委員長の伊藤恵美が、後ろから駆け寄って来た。
「九條さん!いきなり何?」(明らかに怒っている)
「隼人君も隼人君だよ、どうして勝手に腕を組むの?」
(松本華奈は、我が意を得たり、なので、ニンマリとしている)

しかし、九條紀子は強かった。
「長い付き合いなの、幼なじみだし」(ただ、同じ工房で製作されたロボットの意味である)
「隼人君のスミからスミまで、何でも知っているの」
「余計な口出し?嫉妬は恥ずかしいわよ」

立花隼人は、にっこりとAI美少年顏になった。
「まあ、いわゆる人と人の恋愛関係ではない」
「それを越えた関係」
「相互補完の機能もある」
(松本華奈は、この表現で混乱した)(ロボットの結合?と推測してしまった)

さて、伊藤恵美の嫉妬はともかく、立花隼人と九條紀子の腕組み姿は、生徒一般から見て。「実に自然で、愛らしいもの」だったようだ。

「ぷ!AIお人形カップル!」
「おめでたいなあ、なんか、違和感がないの」
「来年の生徒募集のパンフレットは、二人の腕組み姿で決定だよ」

松本華奈と伊藤恵美の違和感をよそに、ロボット二体は、悠々と校庭を歩いて行く。

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