(30)体育講師飯田の処分
文字数 1,256文字
一年A組の生徒のうち、8割にあたる30人が病院に搬送されていった。
病院で事情を聞かれた体育講師飯田は、得意の「熱弁」を繰り返した。
「俺たちの現役の時代は、こんなことはなかった」
「どんなに暑かろうが、寒かろうが、根性で走った」
「それが、当たり前だった」
「今の生徒は、甘え過ぎている」
「親も世間も、甘やかし過ぎだ」
「世間は厳しいものだ」
「こんな程度の天気で倒れるほうが悪い」
しかし、「被害」にあった生徒の親たちが納得しなかった。
「元オリンピック選手だかなんだか知らないけど、生徒をこんなに入院させて謝罪の一言もないの?」
「まるで昭和の時代みたいな精神主義、根性主義、科学性のカケラもない」
「適切な指導ができなくて、生徒を危険な目に遭わせるのだから、指導者失格だよ」
「まさに暑苦しいだけの体育会気質そのもの」
「学園側には、解雇要求を出します」
「裁判を起こして責任追及しましょう」
結局、体育講師飯田は、懲戒解雇処分を受け、武蔵野学園を去った。
(その一連の騒動で、ロボット二体の別格の走りは、忘れられてしまった)
(生徒たちも、炎天下で走るのに精一杯、ロボット二体の走りを、ほとんど見ていなかった)
四限目の授業(生物)は、平穏そのものに終え、ロボット立花隼人と九條紀子は、公安松本華奈と一緒に校門を出た。
松本華奈は、少し疲れ気味だ。(プチ文句を言った)
「入学早々、事件が多過ぎて、報告書を書きき切れないの」
「はぁ・・・肩が凝る」
立花隼人が、(いつもの通り、冷ややかな顏)で、コメントを出した。
「やはり、若さには、ついていけないのか」
「無理はしなくていいよ、いつでも九條紀子が仕事を変わるから」
九條紀子も(ニンマリと)続いた。
「もともと私と隼人さんは、相関関係」
「お互いをフォローするようなシステム構成ですよ」
「その意味では、松本華奈さんはいりません」
松本華奈は、ロボット二体にむかついた。
「年齢で女を差別するの?」
「無粋の極みよ」
「それにロボット二体の相関関係とかフォローって何?」
「マジに意味不明!」
(実は九條紀子に立花隼人を奪われた嫉妬である)
立花隼人は、(今度は甘い顔で)笑った。
「今夜はホテルに来なくていいよ」
「九條紀子と寝る」
九條紀子は、サッと立花隼人と腕を組んだ。
「そうね、積もる話もあるから」
「松本華奈さんは、休養されてもかまいません」
松本華奈は、焦った。
仕事について僅か二日目に、警護対象のロボットから「暇」を出されているのである。
だから懸命に抵抗した。
「いやいや・・・いけません」
「子供二人をホテルになんて、ありえません」(まるで母親の口調だ)
しかし、ロボット立花隼人は、松本華奈の話を聞いていない。
少し先から走って来るタンクローリーを見ている。
「ふらついている、酔っ払いか?あるいは意識喪失?」
九條紀子の目がクルクルと動いた。
「何かの理由で意識喪失です、このまま進むと、商店街に突っ込んで大火災です」
「死傷者も大量に出ます」
「商店街に避難指示を出すべきです」
松本華奈は、震えながら上司に連絡を取っている。
病院で事情を聞かれた体育講師飯田は、得意の「熱弁」を繰り返した。
「俺たちの現役の時代は、こんなことはなかった」
「どんなに暑かろうが、寒かろうが、根性で走った」
「それが、当たり前だった」
「今の生徒は、甘え過ぎている」
「親も世間も、甘やかし過ぎだ」
「世間は厳しいものだ」
「こんな程度の天気で倒れるほうが悪い」
しかし、「被害」にあった生徒の親たちが納得しなかった。
「元オリンピック選手だかなんだか知らないけど、生徒をこんなに入院させて謝罪の一言もないの?」
「まるで昭和の時代みたいな精神主義、根性主義、科学性のカケラもない」
「適切な指導ができなくて、生徒を危険な目に遭わせるのだから、指導者失格だよ」
「まさに暑苦しいだけの体育会気質そのもの」
「学園側には、解雇要求を出します」
「裁判を起こして責任追及しましょう」
結局、体育講師飯田は、懲戒解雇処分を受け、武蔵野学園を去った。
(その一連の騒動で、ロボット二体の別格の走りは、忘れられてしまった)
(生徒たちも、炎天下で走るのに精一杯、ロボット二体の走りを、ほとんど見ていなかった)
四限目の授業(生物)は、平穏そのものに終え、ロボット立花隼人と九條紀子は、公安松本華奈と一緒に校門を出た。
松本華奈は、少し疲れ気味だ。(プチ文句を言った)
「入学早々、事件が多過ぎて、報告書を書きき切れないの」
「はぁ・・・肩が凝る」
立花隼人が、(いつもの通り、冷ややかな顏)で、コメントを出した。
「やはり、若さには、ついていけないのか」
「無理はしなくていいよ、いつでも九條紀子が仕事を変わるから」
九條紀子も(ニンマリと)続いた。
「もともと私と隼人さんは、相関関係」
「お互いをフォローするようなシステム構成ですよ」
「その意味では、松本華奈さんはいりません」
松本華奈は、ロボット二体にむかついた。
「年齢で女を差別するの?」
「無粋の極みよ」
「それにロボット二体の相関関係とかフォローって何?」
「マジに意味不明!」
(実は九條紀子に立花隼人を奪われた嫉妬である)
立花隼人は、(今度は甘い顔で)笑った。
「今夜はホテルに来なくていいよ」
「九條紀子と寝る」
九條紀子は、サッと立花隼人と腕を組んだ。
「そうね、積もる話もあるから」
「松本華奈さんは、休養されてもかまいません」
松本華奈は、焦った。
仕事について僅か二日目に、警護対象のロボットから「暇」を出されているのである。
だから懸命に抵抗した。
「いやいや・・・いけません」
「子供二人をホテルになんて、ありえません」(まるで母親の口調だ)
しかし、ロボット立花隼人は、松本華奈の話を聞いていない。
少し先から走って来るタンクローリーを見ている。
「ふらついている、酔っ払いか?あるいは意識喪失?」
九條紀子の目がクルクルと動いた。
「何かの理由で意識喪失です、このまま進むと、商店街に突っ込んで大火災です」
「死傷者も大量に出ます」
「商店街に避難指示を出すべきです」
松本華奈は、震えながら上司に連絡を取っている。