(17)煽り運転とその始末

文字数 1,393文字

立花隼人は、静かに口を開いた。
「あなたの名前は、花山辰治」
「年齢は、26歳、武蔵野市吉祥寺在住、もっとも住民票だけです」
「車のナンバーから、関係機関に問い合わせ、判明しています」

(ロボット立花隼人は、内蔵された通信システムにより、花山辰治を分析し終えていた)

「仕事は、名目上は、野党衆議院議員安西淳の私設秘書」
「先ほどのスマホは、その安西先生と」
「ただし、実際は、半グレ集団のメンバー」
(松本華奈は、顏を蒼くした)(「花山辰治」は、逆に胸を張った)

花山辰治は、いきなり立花隼人の胸倉を掴んだ。
「だから何だってんだ!このガキ!」
「よくわかんねえけど、この公安の姉ちゃんが勝手に調べたのか?」
「それで、俺を捕まえんのか?」
「いいか!そんなことしたら、公安の姉ちゃんの身分はねえぞ!」
「何しろ、安西大先生がバックだ、それを知りながら、何だ、このザマは!」

花山辰治は、松本華奈にも迫った。
「おい!このポルシェ、何とかしろよ!」
「そんなことも出来ねえのか!日本の公安は!」

サイレンを鳴らして、ようやく白バイの交通機動隊が到着した。
松本華奈が公安の名刺を提示したが、白バイ機動隊員は、目もくれない。
逆に、花山辰治に頭を下げた。
「何か、トラブルでも?」
「安西先生も心配なさっております」
「ポルシェの不調ですか?早速手配いたします」
(立花隼人は、じっと見ているだけ)
(一連の流れを全て録画、官邸とマスコミ、動画サイトに転送している)

少し黙っていた立花隼人が、口を開いた。
「青ポルシェの悪質なアオリ運転の取り締まりかと思っていました」
「しかし、都の交通機動隊は、それを認めず、逆に犯罪者を擁護する」
「国民の安全より、一議員の手下で、犯罪者を擁護ですか」
「もはや、あなたに、国民を守る自覚を認めることは出来ない」

白バイ警察官の目が、厳しくなった。
「何だと?このガキ!」
「公安の警護なんて、俺たちには関係ねえ!」
「どんな御身分か、知らねえが、おおかた大臣のご子息か?」

松本華奈もさすがにキレたらしい。
「いいですか?この高校生は立花隼人君ですよ」
「意味わかります?」

白バイ機動隊は口をポカンと開けた。
「知らねえよ、そんなの」
(実際、上司からの文章を、何も読んでいなかったらしい)

そんな流れに、しびれを切らした花山辰治が、再び安西議員に直接連絡しようと、スマホを持った時だった。

青ポルシェのトランクが、いきなり開いた。
(ロボット立花隼人が青ポルシェのコンピューター制御システムに侵入操作した)
大量の鉄パイプ、火炎瓶、ライフル銃が見えている。
(その画像も官邸、マスコミ、動画サイトに転送されている)

立花隼人は、静かな顏で、花山辰治と白バイ警官を見た。
「煽り運転以外にも、危険な行為が好きなようですね」
「それも、安西議員の指示と見られますよ」
「白バイ警官は、全てを知りながら、擁護すると」
「あなた方の通話記録を調べれば、判明するでしょうね」

その後、花山辰治と白バイ警官は、松本華奈が呼んだ警視庁警官により、逮捕連行されて行った。
問題の安西議員は、当初は「政権の陰謀」と、開き直ったが、野党幹部が認めなかった。
「事実過ぎて、擁護できない」と、政界引退を余儀なくされ、そして逮捕された。
半グレ花山辰治は、余罪も多く、長期間の取り調べ拘留、重い実刑になる予定。
白バイ機動隊員は、「不適切な職務行動」により懲戒解雇となった。
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