5.日和の代わり
文字数 1,001文字
翌日も、翌々日も、空の機嫌は絶好調だった。快晴ってやつだ。雨が降らないってだけで気分が上がる。
雲さえもあまり出番がないとばかりの青空なのに、日和はマンションに帰ってこない。
せっかくのピクニック日よりなのに、だ。
ここのところ、家に帰れば日和がいたからそれが当たり前になっていた。だから、居ないと言うことが、とても不自然に感じてしまう。考えてみれば、僕のマンションなのだから、いないことの方が自然なんだよな。だけど日和の存在は、ここに居るのが当たり前というか。ここの一部っていうか。
巧く言葉にならないけれど、とにかく居ない今が不自然で仕方ない。
僕の憶測だけれど、また日和に新しい男ができたのだろう。
今度は、どんな奴なんだ?
なんて言っても、実際日和が付き合ってきた男に対面したことなど、僕は一度もない。日和の話す言葉の端々や雰囲気から、僕が勝手に想像しているだけの男たちだ。
それとも、どこかの町のお祭りに行って、ピンク色のスプレーをかけられたひよこを探しに行っているのかもしれない。意外と頑固なところのある日和ならありえる。
僕は、ピンク色のひよこを探している日和を想像してみた。当てもなく町を歩き回り、縁日を見つけてはキョロキョロと忙しく視線を動かしひよこを探す。
「ひよこ、ひよこ。ピンク色のひよこ」
頭の中にふわふわで黄色い毛をピンク色にカラーリングされたひよこを思い浮かべながら、日和の真似をして呟いたらなんだか悲しくなってきた。
ひよこを見つけられなくて、肩を落としている日和の姿が想像できたから。
「ひよこは、飼えないよ。大きな鶏になっちゃうし……」
僕は、言い訳のように呟いてみる。
そうして、静かな室内にポツリと一人でたたずみながら思うんだ。
日和は、本当にひよこを探しに出て行ったのかもしれない。こんな季節に祭りの縁日を探すのは、大変だろうな……。
少し肌寒い季節特有の乾燥した空気に、ケホッとひとつ空咳が漏れる。ピクニック計画は、しばらくお預けになりそうだ。
ソファの上に転がる黄色のポスカは、相変わらず日和の替わりみたいにそこに居た。僕はそれを拾い上げる事もなく、ただそうしてそこに居座らせる。日和が戻ってくるまで。
なのに、随分と時間が経っても、日和は戻ってこなかった。
朝、洗面台の歯ブラシが消えていることに、僕は気がついた。
雲さえもあまり出番がないとばかりの青空なのに、日和はマンションに帰ってこない。
せっかくのピクニック日よりなのに、だ。
ここのところ、家に帰れば日和がいたからそれが当たり前になっていた。だから、居ないと言うことが、とても不自然に感じてしまう。考えてみれば、僕のマンションなのだから、いないことの方が自然なんだよな。だけど日和の存在は、ここに居るのが当たり前というか。ここの一部っていうか。
巧く言葉にならないけれど、とにかく居ない今が不自然で仕方ない。
僕の憶測だけれど、また日和に新しい男ができたのだろう。
今度は、どんな奴なんだ?
なんて言っても、実際日和が付き合ってきた男に対面したことなど、僕は一度もない。日和の話す言葉の端々や雰囲気から、僕が勝手に想像しているだけの男たちだ。
それとも、どこかの町のお祭りに行って、ピンク色のスプレーをかけられたひよこを探しに行っているのかもしれない。意外と頑固なところのある日和ならありえる。
僕は、ピンク色のひよこを探している日和を想像してみた。当てもなく町を歩き回り、縁日を見つけてはキョロキョロと忙しく視線を動かしひよこを探す。
「ひよこ、ひよこ。ピンク色のひよこ」
頭の中にふわふわで黄色い毛をピンク色にカラーリングされたひよこを思い浮かべながら、日和の真似をして呟いたらなんだか悲しくなってきた。
ひよこを見つけられなくて、肩を落としている日和の姿が想像できたから。
「ひよこは、飼えないよ。大きな鶏になっちゃうし……」
僕は、言い訳のように呟いてみる。
そうして、静かな室内にポツリと一人でたたずみながら思うんだ。
日和は、本当にひよこを探しに出て行ったのかもしれない。こんな季節に祭りの縁日を探すのは、大変だろうな……。
少し肌寒い季節特有の乾燥した空気に、ケホッとひとつ空咳が漏れる。ピクニック計画は、しばらくお預けになりそうだ。
ソファの上に転がる黄色のポスカは、相変わらず日和の替わりみたいにそこに居た。僕はそれを拾い上げる事もなく、ただそうしてそこに居座らせる。日和が戻ってくるまで。
なのに、随分と時間が経っても、日和は戻ってこなかった。
朝、洗面台の歯ブラシが消えていることに、僕は気がついた。