最終話.もう怖くない
文字数 955文字
後日、世界一幸せなはずの僕のほっぺは、いいように腫れあがっていた。それは、日和の言葉とは全く無関係の事で、原因は日和のことが大好きな紘だった。けれど、元々の原因を作ったのは僕だから、何も言えなるはずがない。
だから僕はその腫れあがったほっぺたに氷をあてがい、イタタ、と唸るだけ。
紘は、僕がついていながら、日和があんな事になったのがショックで許せなかったんだ。
「ライバルだなんて言ったけど。俺は最初から、わかってたんだ。日和ちゃんが、お前を好きなことくらい。わかってたんだっ」
紘はそう一気に捲くし立てた後、右手をグーにして、僕のほっぺを思いっきり殴り飛ばした。
営業だから顔に傷はダメだろう、なんて事は完璧にどうでもよくて。紘は、ただ悔しい、とばかりにキリキリと歯噛みをして、強く拳を握り締め続けていた。
僕の口の中は切れて、鉄のような味に支配された。
もしかしたら、歯が折れたかもしれないと思うくらい強烈なパンチのおかげで、殴られた瞬間意識が飛んだほどだ。おかげで、頭の中ではたくさんの星が散っていた。
だけどこれくらいのこと、日和のうけた心の傷に比べればたいした事はない。
だから、出社して先輩や課長に、どうしたんだ! と執拗に追及されても、僕はひたすらに口をつぐんだ。けれど、外回りからはしばらくはずされた。
反省するには、丁度いい機会だろう。そう、紘は思っているはずだ。だって、日和のことが何より大事で大好きだから。
そんな日和を傷つけた僕の腫れが引くほんの数日の内勤なんて、反省するには短すぎるくらいだろうから。
そんな中、日和と僕がずっと怖がり続けていた事は、僕にはやっぱり起きなかった。
僕は、日和の前から消えたりしない。それが、事実で現実だ。
重なり続けた不幸な偶然が日和から大切な言葉を奪ってしまったけれど、今日和は、その言葉を躊躇うことなく僕へと向ける。
「ともちゃん」
「ん?」
「大好き」
「うん」
クシャリと崩した笑顔は僕だけのものだ。
ねぇ、日和。
僕も、日和のことが大好きだよ。
明日は晴れるらしいから、タマゴサンドを作ってピクニックへ行こう。
もちろん、ディップは多めに挟むよ。
だって、日和は卵のディップが大好きだから――――。
だから僕はその腫れあがったほっぺたに氷をあてがい、イタタ、と唸るだけ。
紘は、僕がついていながら、日和があんな事になったのがショックで許せなかったんだ。
「ライバルだなんて言ったけど。俺は最初から、わかってたんだ。日和ちゃんが、お前を好きなことくらい。わかってたんだっ」
紘はそう一気に捲くし立てた後、右手をグーにして、僕のほっぺを思いっきり殴り飛ばした。
営業だから顔に傷はダメだろう、なんて事は完璧にどうでもよくて。紘は、ただ悔しい、とばかりにキリキリと歯噛みをして、強く拳を握り締め続けていた。
僕の口の中は切れて、鉄のような味に支配された。
もしかしたら、歯が折れたかもしれないと思うくらい強烈なパンチのおかげで、殴られた瞬間意識が飛んだほどだ。おかげで、頭の中ではたくさんの星が散っていた。
だけどこれくらいのこと、日和のうけた心の傷に比べればたいした事はない。
だから、出社して先輩や課長に、どうしたんだ! と執拗に追及されても、僕はひたすらに口をつぐんだ。けれど、外回りからはしばらくはずされた。
反省するには、丁度いい機会だろう。そう、紘は思っているはずだ。だって、日和のことが何より大事で大好きだから。
そんな日和を傷つけた僕の腫れが引くほんの数日の内勤なんて、反省するには短すぎるくらいだろうから。
そんな中、日和と僕がずっと怖がり続けていた事は、僕にはやっぱり起きなかった。
僕は、日和の前から消えたりしない。それが、事実で現実だ。
重なり続けた不幸な偶然が日和から大切な言葉を奪ってしまったけれど、今日和は、その言葉を躊躇うことなく僕へと向ける。
「ともちゃん」
「ん?」
「大好き」
「うん」
クシャリと崩した笑顔は僕だけのものだ。
ねぇ、日和。
僕も、日和のことが大好きだよ。
明日は晴れるらしいから、タマゴサンドを作ってピクニックへ行こう。
もちろん、ディップは多めに挟むよ。
だって、日和は卵のディップが大好きだから――――。