第四章-24

文字数 514文字

       24

 その後、遥香が得たファールで、ブラムがフリー・キックをした。ふわりとしたボールを丁寧に蹴り込むが、キーパーは軽く跳んでキャッチする。
 ボールを手に持ったキーパーは、前方を見回した。少ししてから、パント・キックを放つ。
 高弾道のボールが、遥香とヴィクターの辺りへと飛んだ。二人はボールを注視しながら、ポジション争いを始めた。
 ヴィクターが、遥香の足をがりがり削る。審判の死角だった。しかし遥香は、微塵も気に留めない。
 跳躍は、遥香がわずかに早かった。ヴィクターの力を利用して、より高くへと到達する。
 やや体勢を崩されるが、遥香は頭で左の6番に落とした。だがすぐに詰められて、ボールはコート外に出る。
 着地したヴィクターは、驚愕を湛えた目を遥香に遣った。洗練された佇まいの遥香は、意に介さずボールの行方を追っている。
(やりやがった。同年代の男子選手に、競り合いで勝っちまった。足を痛めつける気が満々のファールも巧みに掻い潜って。女子サッカー期待の星、朝波遥香。ここに来ての覚醒かよ?)
 驚きと興奮が半々の桐畑は、サイド・ステップでポジションを微調整する。ボールを手元に置いた6番が、スロー・インの助走を開始した。
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