第三章-19

文字数 463文字

       19

 試合終了が近くなった。遥香、ブラムと繋がったボールが、ゴールから十m強の位置でエドに渡る。
 3番と向かい合うエドは、細かくボールを動かしていた。すると、にゅっと視界の右下隅から足が伸びてきた。とっさにエドは、足の裏で引いて躱す。
「ようよう、エド君。俺様を差し置いて、ずいぶんと目立ってくれるじゃねえかよ。こりゃあちょっと、丁重かつきっちりとお返しをしなきゃいけないよな。ってわけで、そのボールは頂くぜぇ」
 エドの前に回り込んだマルセロが、たっぷりと抑揚を付けて嘯いた。
 無言のエドは、右、左と上半身だけでリズミカルにフェイントを掛ける。マルセロの右足が、ぴくりと動いた。
(ここだ!)
見切ったエドは、右足の爪先のやや外の場所でキックを放った。
 ボールは、マルセロの出した足の下を通った。3番はマルセロが目隠しとなって、反応ができない。
 そこそこスピードのあるシュートは、ゴールの右上の際どいところに飛んだ。キーパーは慌てて手を伸ばす。が、届かない。
 二対一。ホワイトフォードの、土壇場での勝ち越し点だった。
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