第二章-12

文字数 511文字

       12

 後半十五分、スコアはまだ一対一だった。2番と桐畑は一進一退の攻防を繰り広げており、両チームとも決定打に欠けていた。
 ペナルティ・エリアの左前の角、ボールを足下に置いた2番は、直立状態になった。半身の桐畑は、神経を研ぎ澄ませる。
 唐突に2番は、ボールを斜め前に浮かせた。すぐさま爆速ダッシュを開始する。
 読んでいた桐畑は、2番と並走。身体を当てるが2番の圧力も強く、跳ね返されてはまたぶつかり直す。
 ゴール・ラインが近づいてきて、ゴールへの角度がなくなってきた。構わず2番は、右足の甲でボールを捉えた。
 刹那、桐畑は身体を投げ出して、左足でのスライディング。足の内側に当たったボールは、ラインを割った。
 桐畑は、即座に立ち上がった。コートの外では、味方のキーパーと2番が競走していたが、頭から飛び込んだキーパーがボールを押さえ付けた。ホワイトフォードのゴール・キックとなる。
(あー、やっばい。テンションが上がってきた。全部を出しても、勝てるか怪しい奴との危機迫るマッチ・アップ。俺は今、間違いなく生きている)
 額の汗を拭った桐畑は、「ここ一本、集中ー!」と、自分の胸を満たす熱を、抑えもせずにぶちまけた。
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