島に待つもの(1)
文字数 1,096文字
船は再び大きな衝撃に見舞われた。今度は、光と音ではない物理的な激突である。
僕らは反動で船首の側へと投げだされ、操船していた善次郎さんにぶつかった。恐らく船の底が岩礁か何かと接触したに違いない。
「おい、全員救命胴衣は着ているな! 船底に穴が開いたかもしれん。脱出するぞ! みんな、早く甲板に出るんだ!」
善次郎さんの言葉に、中田先輩と僕、耀子先輩、加藤部長、そして最後に善次郎さんの順で、全員船室から甲板へと飛び出した。
そこで僕たちが目にしたものは、いつの間にか夜になっていたらしく、雨に霞む夜の帳の落ちた南の島の海岸であった。
僕たちの船は、波に流され、この砂浜の砂地の上に乗り上げてしまっていたのである。
この海岸も、晴れた日中でさえあれば、青い空と白い砂浜の美しい浜辺であったろう。
だが今は、雨雲に隠され、星ひとつない闇夜の中である。浜辺は、豪雨の音が響き渡る不気味な音響空間であり、時折光る稲光に青白く照らされた、悪夢のストロボ写真世界でもあった。
その怪しい光が、時折、砂浜の向こうの景色を映し出す。そこには、蔦や椰子の様な木々が生い茂るジャングルがあり、その木々の葉が、雨で濡れているためか、異様に青白く煌めいていた。
「おい、船の中にいて再び流されるより、この島の海岸にいた方が恐らく安全だ。みんな、船を降りるぞ!」
善次郎さんの判断で、僕たちは一斉に膝ぐらいの水深の海岸に降り立ち、ジャバジャバとジャングルが間近に迫る狭い砂浜へと駆けだした。そして雨と海水にぐちゃぐちゃになりながら、浜へと一心不乱に駆け上がる。
そして、やっとのことで陸地に辿り着いた僕たち五人は、おのおの砂地に四つん這いになったり、腰を落としたりしたまま、全員ぐったりとして動くことが暫く出来なかった。
そんな中でも、雨はシャワーの様に容赦なく降り続け、その雨滴の為、皆の髪は額や頬にべったりとくっつき、毛先から小川の様に水の流れを作り続けていく……。
数分経ち、皆がやっと、次にどうしようかと思い始めた時である。中田先輩が突然「あれ見て!」と叫び、ジャングルを指さした。
その先には、黒い男のものとみられる人影があった。そして、その人影は、次の瞬間、雷光に照られ、青白い全身の姿を現し出す。
その男は、190センチは優にある筋骨隆々とした逞しい身体で、少し太い眉と黒い大きな目、高い鼻が精悍なイメージを醸し出していた。髪は頭頂の少し後ろで束ね、前で合わせた襦袢の様な上着を羽織り、膝丈位の緩いズボンを穿いている。そして、右手には、自分の丈よりも長い銛を持ち、彼が漁師であることを語らずも物語っていた。
僕らは反動で船首の側へと投げだされ、操船していた善次郎さんにぶつかった。恐らく船の底が岩礁か何かと接触したに違いない。
「おい、全員救命胴衣は着ているな! 船底に穴が開いたかもしれん。脱出するぞ! みんな、早く甲板に出るんだ!」
善次郎さんの言葉に、中田先輩と僕、耀子先輩、加藤部長、そして最後に善次郎さんの順で、全員船室から甲板へと飛び出した。
そこで僕たちが目にしたものは、いつの間にか夜になっていたらしく、雨に霞む夜の帳の落ちた南の島の海岸であった。
僕たちの船は、波に流され、この砂浜の砂地の上に乗り上げてしまっていたのである。
この海岸も、晴れた日中でさえあれば、青い空と白い砂浜の美しい浜辺であったろう。
だが今は、雨雲に隠され、星ひとつない闇夜の中である。浜辺は、豪雨の音が響き渡る不気味な音響空間であり、時折光る稲光に青白く照らされた、悪夢のストロボ写真世界でもあった。
その怪しい光が、時折、砂浜の向こうの景色を映し出す。そこには、蔦や椰子の様な木々が生い茂るジャングルがあり、その木々の葉が、雨で濡れているためか、異様に青白く煌めいていた。
「おい、船の中にいて再び流されるより、この島の海岸にいた方が恐らく安全だ。みんな、船を降りるぞ!」
善次郎さんの判断で、僕たちは一斉に膝ぐらいの水深の海岸に降り立ち、ジャバジャバとジャングルが間近に迫る狭い砂浜へと駆けだした。そして雨と海水にぐちゃぐちゃになりながら、浜へと一心不乱に駆け上がる。
そして、やっとのことで陸地に辿り着いた僕たち五人は、おのおの砂地に四つん這いになったり、腰を落としたりしたまま、全員ぐったりとして動くことが暫く出来なかった。
そんな中でも、雨はシャワーの様に容赦なく降り続け、その雨滴の為、皆の髪は額や頬にべったりとくっつき、毛先から小川の様に水の流れを作り続けていく……。
数分経ち、皆がやっと、次にどうしようかと思い始めた時である。中田先輩が突然「あれ見て!」と叫び、ジャングルを指さした。
その先には、黒い男のものとみられる人影があった。そして、その人影は、次の瞬間、雷光に照られ、青白い全身の姿を現し出す。
その男は、190センチは優にある筋骨隆々とした逞しい身体で、少し太い眉と黒い大きな目、高い鼻が精悍なイメージを醸し出していた。髪は頭頂の少し後ろで束ね、前で合わせた襦袢の様な上着を羽織り、膝丈位の緩いズボンを穿いている。そして、右手には、自分の丈よりも長い銛を持ち、彼が漁師であることを語らずも物語っていた。