噴火(5)
文字数 1,307文字
悪魔鳥襲撃の影響は、必ずしも僕たちとってマイナス面だけと云う訳ではなかった。
悪魔鳥を畏れる島の住民は、悪魔鳥の襲撃に恐怖し、結果、僕たちに従って、舟で沖に出ることに、不満ながらも彼らなりに承諾してくれたのである。
勿論、僕たちの意見に、島民全員が納得してくれている訳ではない。
元々、悪魔鳥と闘うことに拒否感を示す住民も多く、一部住民には悪魔鳥を神聖化する向きもあり、悪魔鳥 を刺殺した僕たちに、強い反感を抱く者も少なくはなかった。
特に、一瞬のうちに十数羽の悪魔鳥を狩った耀子先輩を見る目は、魔神にでも遭ったかの様に、酷く冷ややかなものであった。
それでも、僕らの指示に従ってくれたのは、中央火山の連続した爆発と、それに伴う地震と地鳴り、家屋の火事などが、彼らの恐怖心を煽っていたからに他ならない……。
僕たちの避難グループは、先頭に耀子先輩と一朗太君、殿 は僕と加藤先輩と善次郎さんで固め、急な悪魔鳥の奇襲に備えながらも急ぎジャングルの坂を降っていく。
尚、中田先輩は島民たちの最後尾、僕たちの直ぐ前を走っていた。
入り江に出た時、僕たちは想定外の光景を目にすることになる。
そこには、僕たちの乗って来た船と島民の何艘かの漁舟がある筈であった。しかし、それらは跡形も無くなって、何故か、影も形も見当たらない……。
多分だが、先程の地震による津波によって、それらは沖へと流されてしまったのではなかろうか?
そのかわり、そこには何十羽という悪魔鳥の集団が屯しており、何やら会合でも開いているかの様であった。
そして、僕たちが現れたのに気付いたのか一斉に僕たちの方に顔を向ける。
耀子先輩を始め、僕たちはそれに怯むことはない。確かに多少僕はびくっとはしたが、別に恐怖に身体が竦んで動けないなんてこともなかった。
「幸四郎、大丈夫?」
それでも、耀子先輩は僕に気を遣ってくれる。しかし、仮にどんなに怖かったとしても、男として、彼女を前に弱音を吐くことなど出来はしない。
「大丈夫ですよ! 仮に傷付けられても、直ぐには鳥憑きには罹りませんからね。東京に戻ってから虫下しを飲めば、何のことはありませんよ!!」
その時、善次郎さんが、僕たちから少し離れた位置に移動した。
悪魔鳥は、僕たちを無視して、善次郎さんの動きに反応する。善次郎さんは、それを確認しようとした様で、満足そうにニヤリと笑みを浮かべた。
「悪魔鳥は、どうやら、善次郎さんを狙っているみたいね……」
中田先輩の言葉に、善次郎さん自身がその答えを返した。
「ああ……。こいつら、鳥憑き病になる予定の人間が好みの様だな……」
これも、恐らくなのだが……。
あの回虫に寄生されると、人は独特の臭いを発するのであろう。悪魔鳥は、多分、その臭いに集まる習性があるのに違いない。
それにより、自殺した鳥憑き患者の肉は、早々に悪魔鳥の餌として供されることになるのだ……。
そう云えば、鳥憑きで死んだ人間の遺体は棺に湯の華を入れて葬らないと、悪魔鳥が墓を掘り起こしてまで死肉を狙ってくると、村の長老も言っていた。その理由は、死肉が発する、鳥憑き特有の臭いだったのではなかろうか……?
悪魔鳥を畏れる島の住民は、悪魔鳥の襲撃に恐怖し、結果、僕たちに従って、舟で沖に出ることに、不満ながらも彼らなりに承諾してくれたのである。
勿論、僕たちの意見に、島民全員が納得してくれている訳ではない。
元々、悪魔鳥と闘うことに拒否感を示す住民も多く、一部住民には悪魔鳥を神聖化する向きもあり、
特に、一瞬のうちに十数羽の悪魔鳥を狩った耀子先輩を見る目は、魔神にでも遭ったかの様に、酷く冷ややかなものであった。
それでも、僕らの指示に従ってくれたのは、中央火山の連続した爆発と、それに伴う地震と地鳴り、家屋の火事などが、彼らの恐怖心を煽っていたからに他ならない……。
僕たちの避難グループは、先頭に耀子先輩と一朗太君、
尚、中田先輩は島民たちの最後尾、僕たちの直ぐ前を走っていた。
入り江に出た時、僕たちは想定外の光景を目にすることになる。
そこには、僕たちの乗って来た船と島民の何艘かの漁舟がある筈であった。しかし、それらは跡形も無くなって、何故か、影も形も見当たらない……。
多分だが、先程の地震による津波によって、それらは沖へと流されてしまったのではなかろうか?
そのかわり、そこには何十羽という悪魔鳥の集団が屯しており、何やら会合でも開いているかの様であった。
そして、僕たちが現れたのに気付いたのか一斉に僕たちの方に顔を向ける。
耀子先輩を始め、僕たちはそれに怯むことはない。確かに多少僕はびくっとはしたが、別に恐怖に身体が竦んで動けないなんてこともなかった。
「幸四郎、大丈夫?」
それでも、耀子先輩は僕に気を遣ってくれる。しかし、仮にどんなに怖かったとしても、男として、彼女を前に弱音を吐くことなど出来はしない。
「大丈夫ですよ! 仮に傷付けられても、直ぐには鳥憑きには罹りませんからね。東京に戻ってから虫下しを飲めば、何のことはありませんよ!!」
その時、善次郎さんが、僕たちから少し離れた位置に移動した。
悪魔鳥は、僕たちを無視して、善次郎さんの動きに反応する。善次郎さんは、それを確認しようとした様で、満足そうにニヤリと笑みを浮かべた。
「悪魔鳥は、どうやら、善次郎さんを狙っているみたいね……」
中田先輩の言葉に、善次郎さん自身がその答えを返した。
「ああ……。こいつら、鳥憑き病になる予定の人間が好みの様だな……」
これも、恐らくなのだが……。
あの回虫に寄生されると、人は独特の臭いを発するのであろう。悪魔鳥は、多分、その臭いに集まる習性があるのに違いない。
それにより、自殺した鳥憑き患者の肉は、早々に悪魔鳥の餌として供されることになるのだ……。
そう云えば、鳥憑きで死んだ人間の遺体は棺に湯の華を入れて葬らないと、悪魔鳥が墓を掘り起こしてまで死肉を狙ってくると、村の長老も言っていた。その理由は、死肉が発する、鳥憑き特有の臭いだったのではなかろうか……?