生還(2)
文字数 1,253文字
耀子先輩の力に感心し、加藤部長が思わず声を上げる。
「これ程のことが出来るとは……、流石、耀公主だな……」
でも、僕はまだ安心は出来ないと考えている。にも関わらず、もう2人は、危険は去ったものと気を抜ききっているみたいだ。僕は注意喚起の意味から、考えていた懸念を2人に話しておくことにした。
「確かに島は消滅しました。悪魔鳥も全滅したに違いありません。でも、海に落ちた悪魔鳥を魚が食べて、あの鳥憑きが、魚を食べた人間に寄生するかも知れません。
それと、この中の島民には悪魔鳥の爪や嘴に傷つけられた者、傷口から土などを介して鳥憑き回虫の卵に感染している者も、恐らく何名かいるでしょう。
加藤先輩だって、随分と傷を負っているじゃないですか。ここにいる人間から、鳥憑きが全世界に広がる懸念だって、全く無い訳じゃないですよね……。
今暫く、島民の経過を確認しないと……」
しかし、加藤部長はそんなこと、全く心配していない様子であった。
「それなら大丈夫。あの鳥憑きは人間と悪魔鳥と云う2つの宿主があって、やっと世代のサイクルを廻して行けるのさ。人間だけでは奴らは種を維持できない。
今感染している人間の方は、少しばかり寄生虫症に苦しむだろうが、海人草で何とか駆除出来るだろう……。
もう、これ以上追加寄生されることもないだろうから、彼らが重症化することもないと思うよ」
「しかし……」
「幸四郎、彼には確信があるのよ。事実という確信が……」
「事実?」
僕には耀子先輩の言っている意味が、全く掴めなかった。
「現代、鳥憑きはどこにも存在していない。もう撲滅されているの。そう云う歴史上の事実があるから、彼は『もう心配いらない』と言っているのよ……」
加藤部長は耀子先輩の言葉を聞いて、下を向いて笑いを噛み殺している様だ。
「もういいでしょう? あなた、加藤君じゃないわよね。何者なの?」
「フフフフフ、やはりバレてましたか」
その言葉にも、耀子先輩は何の驚きの色も見せない。正直言って、僕だって加藤部長にしては少々出来過ぎていると、ずっと思っていたのだ。
「私は薬師 華佗 ……。今からだと二千年も昔に生きた医者じゃよ。しかし、どこで、いつから分かっておった?」
二千年も前の人間? 僕は加藤部長の言葉を疑った。しかし、耀子先輩はさして意に介していない様だった。
「勿論、加藤君が超人化した可能性も零ではないと思っていたわよ。絶対なんてことないもの。でも……、そうね、疑惑を持ったのは……、最初からかしらね?」
「最初?」
「そう、加藤君が私を誘った時から。そんなこと、何か悪企みでもない限り、あり得ないもの。でも、あなたからは、私を陥れようと云う邪気が全く無かった。
だから、脅威を感じないこのイベントに敢えて参加したの……。そして、このイベント中、あなたが何をしたいのか、ずっと考えていたわ……」
「で、分かったのかな?」
「ええ、恐らくだけど……。あなたは、過去に遭遇した、鳥憑き病の正体を確かめたかった。そうじゃないかしら?」
「ご名答!」
「これ程のことが出来るとは……、流石、耀公主だな……」
でも、僕はまだ安心は出来ないと考えている。にも関わらず、もう2人は、危険は去ったものと気を抜ききっているみたいだ。僕は注意喚起の意味から、考えていた懸念を2人に話しておくことにした。
「確かに島は消滅しました。悪魔鳥も全滅したに違いありません。でも、海に落ちた悪魔鳥を魚が食べて、あの鳥憑きが、魚を食べた人間に寄生するかも知れません。
それと、この中の島民には悪魔鳥の爪や嘴に傷つけられた者、傷口から土などを介して鳥憑き回虫の卵に感染している者も、恐らく何名かいるでしょう。
加藤先輩だって、随分と傷を負っているじゃないですか。ここにいる人間から、鳥憑きが全世界に広がる懸念だって、全く無い訳じゃないですよね……。
今暫く、島民の経過を確認しないと……」
しかし、加藤部長はそんなこと、全く心配していない様子であった。
「それなら大丈夫。あの鳥憑きは人間と悪魔鳥と云う2つの宿主があって、やっと世代のサイクルを廻して行けるのさ。人間だけでは奴らは種を維持できない。
今感染している人間の方は、少しばかり寄生虫症に苦しむだろうが、海人草で何とか駆除出来るだろう……。
もう、これ以上追加寄生されることもないだろうから、彼らが重症化することもないと思うよ」
「しかし……」
「幸四郎、彼には確信があるのよ。事実という確信が……」
「事実?」
僕には耀子先輩の言っている意味が、全く掴めなかった。
「現代、鳥憑きはどこにも存在していない。もう撲滅されているの。そう云う歴史上の事実があるから、彼は『もう心配いらない』と言っているのよ……」
加藤部長は耀子先輩の言葉を聞いて、下を向いて笑いを噛み殺している様だ。
「もういいでしょう? あなた、加藤君じゃないわよね。何者なの?」
「フフフフフ、やはりバレてましたか」
その言葉にも、耀子先輩は何の驚きの色も見せない。正直言って、僕だって加藤部長にしては少々出来過ぎていると、ずっと思っていたのだ。
「私は
二千年も前の人間? 僕は加藤部長の言葉を疑った。しかし、耀子先輩はさして意に介していない様だった。
「勿論、加藤君が超人化した可能性も零ではないと思っていたわよ。絶対なんてことないもの。でも……、そうね、疑惑を持ったのは……、最初からかしらね?」
「最初?」
「そう、加藤君が私を誘った時から。そんなこと、何か悪企みでもない限り、あり得ないもの。でも、あなたからは、私を陥れようと云う邪気が全く無かった。
だから、脅威を感じないこのイベントに敢えて参加したの……。そして、このイベント中、あなたが何をしたいのか、ずっと考えていたわ……」
「で、分かったのかな?」
「ええ、恐らくだけど……。あなたは、過去に遭遇した、鳥憑き病の正体を確かめたかった。そうじゃないかしら?」
「ご名答!」