仮説(4)
文字数 963文字
耀子先輩は、一朗太君に向かってニッコリと微笑んだ。
「一朗太君、お世話になってばかりだけど、電話を借りれないかしら? 私たちの船は壊れて帰れないから、是枝君たちに連絡とって救援を頼もうと思うのよ。でも、私たちのスマホは圏外みたいで使えないの……」
「電話? 何? それ?」
耀子先輩は、小さな驚きの表情の後に、納得の笑みに戻って言葉を変えた。
「ごめん。固定電話も通ってないんだ……。じゃあ無線でも何でもいいわ」
「電話? 無線? 何、それ? お姉ちゃん、何言ってるの?」
流石に耀子先輩も困惑の表情に変わった。
「え? ここ東京都でしょう? 行政とどうやって情報のやり取りしているの? 連絡船だけ? 緊急の連絡はどうするの?」
一朗太君も困惑している。
「おいらにゃ何のことやら、全く分かんないぜ。東京都って……?」
その答えは僕にも意外だった。仮にここが東京でなかったとしても、東京都のことぐらい日本人なら誰でも知っている筈だ。少なくとも、一朗太君は子供ではあるが、その程度は理解できる常識と理性を持っている。
彼は日本人ではないのか?
「一朗太君! ここは日本じゃないのか?」
「なんだい、日本ってのは?」
僕たちは言葉を失った。ここは何処なんだ? その疑問に中田先輩がストレートに一朗太君に問うた。
「ここは何て国なの? 本土とはどうやって情報のやり取りをしているの? ここには誰も来ないの?」
「なんだい? 国や本土ってのは……?
おいらたちはずっと島で暮らしてきたんだ。難破してきた船乗り以外は、誰もこの島には来ないぜ」
「だったら、なんで、島の人は日本語を話しているの?」
しかし、この答えは再び起こった地震の揺れにかき消された。そして、その揺れが収まった時、加藤部長が静かに口を開いた。
「どうやら、直ぐに助けは期待出来ない様だ。僕たちで何とかしないと……、大学に帰ることも出来ないと云うことらしい……」
それには、耀子先輩が確認を加える。
「私たちの船は壊れているのよ。島民に船をお願いするにしても、どこに帰して貰うのか、どっちの方向に船を進めるのか? 恐らく、彼らだって分かりはしないわ」
「善次郎さんに、船と無線を直して貰うしかないだろうな……。だから、先ず、僕たちだけで、鳥憑きを撲滅し、善次郎さんを治療部屋から救出するんだ!」
「一朗太君、お世話になってばかりだけど、電話を借りれないかしら? 私たちの船は壊れて帰れないから、是枝君たちに連絡とって救援を頼もうと思うのよ。でも、私たちのスマホは圏外みたいで使えないの……」
「電話? 何? それ?」
耀子先輩は、小さな驚きの表情の後に、納得の笑みに戻って言葉を変えた。
「ごめん。固定電話も通ってないんだ……。じゃあ無線でも何でもいいわ」
「電話? 無線? 何、それ? お姉ちゃん、何言ってるの?」
流石に耀子先輩も困惑の表情に変わった。
「え? ここ東京都でしょう? 行政とどうやって情報のやり取りしているの? 連絡船だけ? 緊急の連絡はどうするの?」
一朗太君も困惑している。
「おいらにゃ何のことやら、全く分かんないぜ。東京都って……?」
その答えは僕にも意外だった。仮にここが東京でなかったとしても、東京都のことぐらい日本人なら誰でも知っている筈だ。少なくとも、一朗太君は子供ではあるが、その程度は理解できる常識と理性を持っている。
彼は日本人ではないのか?
「一朗太君! ここは日本じゃないのか?」
「なんだい、日本ってのは?」
僕たちは言葉を失った。ここは何処なんだ? その疑問に中田先輩がストレートに一朗太君に問うた。
「ここは何て国なの? 本土とはどうやって情報のやり取りをしているの? ここには誰も来ないの?」
「なんだい? 国や本土ってのは……?
おいらたちはずっと島で暮らしてきたんだ。難破してきた船乗り以外は、誰もこの島には来ないぜ」
「だったら、なんで、島の人は日本語を話しているの?」
しかし、この答えは再び起こった地震の揺れにかき消された。そして、その揺れが収まった時、加藤部長が静かに口を開いた。
「どうやら、直ぐに助けは期待出来ない様だ。僕たちで何とかしないと……、大学に帰ることも出来ないと云うことらしい……」
それには、耀子先輩が確認を加える。
「私たちの船は壊れているのよ。島民に船をお願いするにしても、どこに帰して貰うのか、どっちの方向に船を進めるのか? 恐らく、彼らだって分かりはしないわ」
「善次郎さんに、船と無線を直して貰うしかないだろうな……。だから、先ず、僕たちだけで、鳥憑きを撲滅し、善次郎さんを治療部屋から救出するんだ!」