身代わり(2)
文字数 972文字
耀子先輩は、島の長老に尚も食い下がる。
「では、鳥の死骸の方だけでも……。せめて釜茹でにする前に。いいえ、それが駄目なら茹でた後でもいいのですけれど……」
「それも駄目じゃ。その悪魔鳥は、死骸を近くに置いておくだけで鳥憑きにする魔力を持っておる。素手で触るなど以ての外じゃ」
長老は、耀子先輩の嘆願にも一向に応じようとはしない。彼らは僕たちに対し、敵意は持っていない様であるが、鳥憑きに関することは頑なに拒否し続けた。それはもう、宗教的な狂信に近い様に僕には思えた。
「随分と迷信深い人たちですね……」
僕は解放され、戻ってきた加藤部長にそっと囁いた。しかし、彼はそうは思っていない様であった。
「いや、思った以上に、ここの島民は合理的だよ。恐らく、長年の経験がそうさせているんだと思う。勿論、僕が思っている通りのことであるならばだが……」
耀子先輩も、これ以上は強硬に自説を訴える心算は無いらしく、善次郎さんが治療部屋へと引き立てられていくのを見送った。
そして善次郎さんは、加藤部長にこう言葉を残していったのである。
「亨君、君ならきっと鳥憑きの謎を解くことが出来る。そして打ち勝つ手立ても見つけてくれる。わしは信じているぞ!」
僕たちは、その日一日、一朗太君の家に籠っていた。
食事に関しては、長老たちの計らいで、一朗太君の分も含めて、それなりのものが用意されている。彼らは決して未開の土着民ではない。相当に高い民度と倫理観を持った尊敬すべき人たちだった。
善次郎さんについても、同様の食事が提供されているようである。但し、彼には治療薬と云う特別なデザートが用意されていて、それは最悪の味と香りなのだそうだ。
その情報は、一朗太君と親しい島民のお民さんが、我々の食事を運んできた時に伝えてくれたものだ。そして、お民さんは内緒で僕たちに、善次郎さんからの手紙を届けてくれていたのである。
因みに……、それによると、善次郎さんは、今日一日、身体がだるく、多少熱があるのではないかと話している。また、島民の親切を裏切るようで心苦しいが、治療薬は飲んだ振りをして、便所に捨てているとも書いてあった……。
僕は、善次郎さんに確かめた訳ではないのだが、それは治療薬を疑ってのことではなく、逆に発病させる為に、態と彼はそうしているのではないかと考えている……。
「では、鳥の死骸の方だけでも……。せめて釜茹でにする前に。いいえ、それが駄目なら茹でた後でもいいのですけれど……」
「それも駄目じゃ。その悪魔鳥は、死骸を近くに置いておくだけで鳥憑きにする魔力を持っておる。素手で触るなど以ての外じゃ」
長老は、耀子先輩の嘆願にも一向に応じようとはしない。彼らは僕たちに対し、敵意は持っていない様であるが、鳥憑きに関することは頑なに拒否し続けた。それはもう、宗教的な狂信に近い様に僕には思えた。
「随分と迷信深い人たちですね……」
僕は解放され、戻ってきた加藤部長にそっと囁いた。しかし、彼はそうは思っていない様であった。
「いや、思った以上に、ここの島民は合理的だよ。恐らく、長年の経験がそうさせているんだと思う。勿論、僕が思っている通りのことであるならばだが……」
耀子先輩も、これ以上は強硬に自説を訴える心算は無いらしく、善次郎さんが治療部屋へと引き立てられていくのを見送った。
そして善次郎さんは、加藤部長にこう言葉を残していったのである。
「亨君、君ならきっと鳥憑きの謎を解くことが出来る。そして打ち勝つ手立ても見つけてくれる。わしは信じているぞ!」
僕たちは、その日一日、一朗太君の家に籠っていた。
食事に関しては、長老たちの計らいで、一朗太君の分も含めて、それなりのものが用意されている。彼らは決して未開の土着民ではない。相当に高い民度と倫理観を持った尊敬すべき人たちだった。
善次郎さんについても、同様の食事が提供されているようである。但し、彼には治療薬と云う特別なデザートが用意されていて、それは最悪の味と香りなのだそうだ。
その情報は、一朗太君と親しい島民のお民さんが、我々の食事を運んできた時に伝えてくれたものだ。そして、お民さんは内緒で僕たちに、善次郎さんからの手紙を届けてくれていたのである。
因みに……、それによると、善次郎さんは、今日一日、身体がだるく、多少熱があるのではないかと話している。また、島民の親切を裏切るようで心苦しいが、治療薬は飲んだ振りをして、便所に捨てているとも書いてあった……。
僕は、善次郎さんに確かめた訳ではないのだが、それは治療薬を疑ってのことではなく、逆に発病させる為に、態と彼はそうしているのではないかと考えている……。