第46話

文字数 1,469文字

「おれはそんな人間じゃないよ。おれはまた同じ失敗をする。そういう男だよ」
 
 自信満々に言うおじいちゃんに向かって、鉄仮面が静かに「何いってんの?威張らないでよ、お義父さん」と突き刺すように言った。






 鉄仮面が言うのもごもっとも
 おじいちゃん、才能あるのにものすごい他力本願
 ある意味、潔いいけどさ





 
「じゃあ、サトコさんは、おれが負けても良いのか?あんたの家族が一番とれなくても、悔しくないのか?!」とおじいちゃんがつめよる。

 両者、睨み合い。
 沈黙を破ったのは鉄仮面だった。

「悔しいに決まってるでし ょうが!」
「じゃあ、コーチやんないと!ほら、やんないと!!・・・おれ、負けるよ」





 おじいちゃん、鉄仮面を脅迫してるのか?
 なぜか形勢逆転してるーー!
 鉄仮面は顔をしかめて追い詰められてるし





「やるわよ!やればいいんでしょ!!・・・でもね、負けたらただじゃおかないから・・・」と鉄仮面。






 鉄仮面からは、すごい殺気が!
 負けたら抹殺されそうなんですけどー
 スポーツ吹き矢でそんなに真剣になるの?





「おー、望むところだ!」とおじいちゃんが受けて立つ。
 おじいちゃんの応援団の方達からは歓声が上がり、もう優勝したみたいだった。
 そして、本当に優勝した。


「おじさん、決勝戦もあがりまくってましたねー」と康夫さん。
「大は毎試合、新鮮にあがれるのよ。慣れるってことなかったね」と大竹さんが言った。

「そうだったわね。サトコちゃんがいて良かったわね、大ちゃん」と向井さんに言われると、おじいちゃんが嬉しそうに笑った。





 みんな、爽やか雰囲気出してるけど・・・

 おじいちゃんは決勝戦でもあがりまくるし
 鉄仮面は静かに嫌味な言葉を突き刺しまくるし

 おじいちゃんはムカつきをエネルギーにかえて良い結果を出してたけど・・・

 スポ根の精神論とか、美しき師弟関係とも違う
 なんなのこれ?!





「コーチ、これからもさ、おじさんとムカつき合える良い距離感を保つよう、おねがいしますよ!」と康夫さんが言った。





 ムカつき合える良い距離感って!?
 でも、・・・

 『ムカつく』って良いイメージなかったけど、使いようによっては良い結果を出せるのね
 新発見ーーー!!





「おい、なに笑ってんだ?」と椎名があたしに言ってきた。





 え?
 笑ってた?あたしが??

 いいじゃん!
 だって、変なんだもんーーー





「さあ、祝賀会やりますよー!来られる方は、シェアハウスまで来てくださいねー」と草太さんがみんなに言っている。

 帰ろうとする鉄仮面にお父さんが、「帰るの?コーチなのに?!」と声をかけた。
「ムカつき合える良い距離感とんないといけないから」と鉄仮面。





 まじめか!

 お父さん、ちょっとさみしそう
 一緒に行きたかったのね





「しょうがねえよな、選手のためだもんな・・・」とお父さんも真面目であった。

「あれが、本当のあいつなんだよ。ちょっと、いろいろ悩んでたみたいで、上手いこと出せてなかっただけでさ。スランプだったんだな。でも、ママは復活した。今日、ママ、カッコ良かったろ?」とお父さんが言った。




 悩んでた?
 鉄仮面が???
 なんか、よくわからんが・・・





「うん、カッコ良かったね。お母さん」とあたしが言った。

「・・・お、お母さん・・・」とうろたえるお父さん。





 あ!この人は、あたしがパパ、ママと呼んでいると思ってるんだった
 昔から、パパ、ママって、違和感あって、自分の中では勝手に変えてたんだけど、恥ずかしくて呼んでなかったのよね

 



 お父さんは、尋常じゃないくらい無表情になった。
 そして、なぜか家に帰っていった。
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