第42話

文字数 1,610文字

 おじいちゃんが参加する、スポーツ吹き矢大会が明日行われる。
 今日はシェアハウスで壮行会をやることになった。




 壮行会って!!
 近所の市民体育館でやるのに???
 参加者、20人くらいって聞いたけど・・・

 壮行会の言い出しっぺは、康夫さんだな、きっと
 とんでもなく、興奮してる・・・





「おじさん、すごいですよね!優勝候補なんでしょ。明日も応援に行きますからね!!」と康夫さん。

「先輩、店いいんですか?明日、休みじゃないでしょう」と、うちのお父さんが言うと、「仕事なんか、やってられるかよ!優勝候補だぞ。優勝の瞬間、見ないとだろ!!」と大興奮で康夫さんが言い返した。





 康夫さん、ありがとう!
 他人なのに、そんなに興奮してくれて
 おじいちゃんも応援されて嬉しそうだな





「お店はあたしがやるんで大丈夫です。この人いても、仕事にならないと思うんで。もう、すごいんですよ!おじさんが優勝候補だって聞いてから、絶対試合見に行くって。うちの娘のときも大変だったんですよ、運動会でしたけど。足が速いから1番になるって、毎年、娘以上に興奮しちゃって。毎年、運動会前日に壮行会してました・・・。今回も、おじさんの大会が近ずつくにつれ、ドキドキが止まらないらしくて。すみませんけど、主人をよろしくお願いします」と康夫さんの奥さんが言った。





 優勝・・・
 一等賞・・・
 あたしには無縁だわ
 だから、うちの家族はあたしの運動会の時、盛り上がらないのね

 優秀な子がいる家では、こんな感じで盛り上がるのかしらね?
 うちのお父さんも、ちょっと興奮してるもんね





「先輩が来てくれるなんて、嬉しいです!な、おやじ。鬼に金棒だな!」とお父さんが話した。





 鬼に金棒!?
 お父さん、だいぶ興奮してるね





 壮行会には、大竹さん家族、椎名家族のみんなが来てくれていた。
 そして、フジやんや、ハルカさんとヒカルちゃんも来てれた。




 うちのお母さんは、来るわけないかー!
 自分の娘の運動会にも来ないもん
 そりゃそうだよねー!!

 あと、T子もいなかった
 夏バテが続いているらしい
 ちょっと、心配なのよね



「ヒ、ヒカルも元気になったので、・・・応援・・いきますね」とハルカさん。

「病気してたんですか?」とフジやんが聞くと、向井さんが事情を説明してくれた。

「先週、ヒカルちゃん、風邪ひいちゃったみたいで。私、ハルカちゃんが仕事の時に少し預かったのね。しばらくして、元気そうなんだけど、なんか顔が赤くなってきて。でも、私、子供いないから、よくわかんなくて慌ててたら、テイちゃんがきてね。『熱がある』って言ってね・・・」

 その後のT子の動きは無駄がなく、草太さんのお父さんが医者なので、すぐに呼んで診てもらい、ヒカルちゃんの寝床を作り、頭を冷やすものを用意し等々、テキパキとこなしたらしい。

 「その時のテイちゃん、もとのテイちゃんに戻ってたのよ。なんか、嬉しかったわ」と涙ぐみながら話す向井さん。

 大竹さんは、「あたしは出掛けてから見てないんだけど、草ちゃんのお父さんも驚いてたもんね。テイちゃん、学校の先生やってたから、子供のことになると、記憶が戻ってくるのかね?テイちゃんも良くなるといいわよね」と話した。





 ヒカルちゃん、一瞬かもしれないけど、認知症を治しちゃうなんて、すごい子ね!

 T子もシェアハウスに来たりしてるんだ
 ちょっと安心したー





 草太さんがキッチンの方から、「明日、応援に来てくれる人、ここに名前書いてくださいね。お弁当作っていきますから」とみんなに声をかけた。

 みんな一斉に、リストに名前を書き始めている。

 


 えええー
 ここに居る人たち、ほとんど来るの?
 おじいちゃん、期待されてるわねー

 昔、サッカーで国体行ったくらいだもんね
 半身麻痺があってハンデはあるけど、結構いい線いくのかもね
 おじいちゃん、シェアハウスに来て本当によかったね




 おじいちゃんは、この日、ずっと笑顔だった。
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