第45話

文字数 1,461文字

 おじいちゃんの初試合は、なんとか終わった

 この時点で、おじいちゃんはトップ
 だけど、満点じゃないから、他の選手の得点によっては優勝できないかも

 それに・・・
 鉄仮面ことお母さんが審判に注意されてる
 おじいちゃん、鉄仮面のせいで失格になるかもしれない

 周りの人達も、鉄仮面の発言にドン引きしてるし
 ご近所さんの目が・・・・・
 あー、もう、やだーーーー







「申し訳ございませんでした!」とお父さんが何度も審判に頭を下げている。
 そして鉄仮面も「すみませんでした」と小さい声だが謝っていた。

 怒鳴ったりしないよう最後通告され、2人は戻ってきた。

 どこからともなく、「鬼嫁」、「老人虐待」と声が聞こえてきた。






 そりゃ、そうだよね・・・
 老人を恫喝してるようにしか見えないし

 おじいちゃんが試合をやれたのは、鉄仮面のお陰もある
 だけど、あんな言い方・・・






「誰ですか?!やめてもらえませんか。どなたかわかりませんが、妻の良いところ、まったくわかってないですよ!」とお父さんが言い出した。

「鬼嫁」とか「老人虐待」とかを言ったであろう方々は、お父さんから目を逸らした。

 お父さんは続けて、「これは、妻の良いところです。こんなにハッキリと言ってくれないですよ、普通。ハッキリ言う分、自分のハードルも上がるわけですよ。『あんなこと言ってたのに、自分はたいしたことないな』とか言われるから。だから、みんな保険をかけて言わないです。でも、うちのママは言うんです。ハッキリと。しかも、とってもきつい感じで。その分、自分もがんばるんです。そういう人なんです。妻にとってはこれが応援なんです。それだけはご理解ください!」と会場のみんなに聞こえるような声で言った。





 ええ?!ええええーーーーーー!!!
 何この展開???
 それに、お父さん、めっちゃお母さんのこと好きじゃん
 全然、冷え切っていない!
 なんで?????







「夫婦って、わかんないな・・・」と椎名が呟いた。






 頭の良い椎名でもわからないんだから、あたしにわかるはずかない!
 






 鉄仮面は、「やめてよ!あたし帰るし、もういいわよ」とお父さんに言って、会場を出ようとした。
 が、くるりと振り返り「でも、これだけはいいですか。うちの父は耳が遠いんです。だから、大きい声を出してました。ご不快な思いをさせたのでしたら、申し訳ございませんでした」と頭を下げた。
 






 さすが鉄仮面
 言われっぱなしでは終わらない







「おれ、聞こえるよ」とおじいちゃんが言い、鉄仮面がすぐさま頭を上げた。
 そして、おじいちゃんを睨みつけた。

 睨みつけられていることに動じず、おじいちゃんは「良い補聴器買ったんだよ。日本製は違うんだよな」と鉄仮面に話しかける。

「え?なんで?!あんなに嫌がってたのに?」
「昔の話だよ、ハハハハハ」
「お義父さん、聞こえるんだったら言ってください。あたし、鬼嫁とか老人虐待とか言われてるんですよ!!」

 おじいちゃんとお父さんは大爆笑。
 そして、応援団の方達もお腹を抱えて笑っている。
 更に怒りまくる鉄仮面に、康夫さんが話しかけた。

「まあまあ、サトコちゃん、許してやってよ。それにさ、サトコちゃんに帰られたら困るんだよね。同点の人がでたから、決勝戦までいてもらわないとね。コーチなんだから」




 鉄仮面がコーチ?
 いつの間に?




「もう大丈夫ですよ。さっき、ちゃんとやれたんだから」と鉄仮面。
 だが、おじいちゃんは、「おれは、そんなちゃんとした人間じゃないよ。また同じ失敗をする。そういう男だよ」と自信満々に言い放った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み