第12話

文字数 1,591文字

 素直に謝る、友達になりたいとお願いする、人の意見をちゃんと聞く

 苦手なことをどんどんクリアしている

 おじいちゃんの進化がとまらない!






 椎名は早速、レンジの使い方をおじいちゃんに教えた。

 練習用にと大竹さんが、冷凍の今川焼を提供してくれた。

 今川焼、1個につき500Wで50秒。

 扉を開け、今川焼を入れ扉を閉めたら、ワット数を設定。
 そして、秒数を設定してスタートボタンを押す。

 おじいちゃんは、何回も椎名に操作方法を確認しながら今川焼を温めた。
 5個目を温める時には、一人で微調整も出来るようになっていた。




 おじいちゃん、出来ないことが出来るようになって嬉しそう
 あんな顔を見るの初めてだ

 だが、ここまで約1時間・・・
 とんでもなく申し訳ないが、家では、こんなの付き合いきれん

 椎名よ、ありがとう

 温めた今川焼は、みんなで美味しくいただきました
 冷凍食品の進化にも感謝!



 つぎに椎名は、レンジを置いている台とリビングのテーブルの高さを測り、向井さんの旦那さんが使っていた、可動式の小さなテーブルみたいなワゴンを持ってきて、すべての高さを同じにした。

 そして、レンジの中に100均で買った熱くならないトレーを入れ、おじいちゃんに、それごとワゴンまで引き出すようにと言った。



 片手しか使えないおじいちゃんが、温めたものをどう運ぶか・・・
 椎名よ、前から考えてくれてたのか!?
 感謝しかない



 おじいちゃんは、お昼用のご飯をレンチンし、扉を開け、トレーごとワゴンに乗せた。

「おぉーーー!!」
 湧き上がる観衆!

 なにかの競技で勝ったかのように、おじいちゃんはガッツポーズをしている。
 そして、みんな自分のことのように喜んでいる。




 あたしもすごく嬉しかった
 が、その反面、問題を乗り越えていくおじいちゃんと椎名を見て、複雑な気持ちになり・・・

 なんで、今まで、椎名のように考えてあげたり、付き合ってあげることができなかったのか・・・

 付き合いきれんと思ってしまう気持ちは一体・・・




「あらやだ、もう3時よ。お昼食べてないのに、おやつの時間になっちゃったわね。おやつは、さっき食べたけどね」と向井さんが言った。

 すると草太さんが、「お店に出す予定の試作品なんだけど、食べてくれない?」と、サラダやサンドイッチを持ってきてくれ、みんなで食べた。



 ニンジンのドレッシング、うますぎるーーー

 そして、サンドイッチはホットサンドもあって、チーズがとろけて美味しい~

 きっと、椎名お父さんがいたら、また感動したに違いない



 あと、おじいちゃんが飲んだハーブティーソーダも持ってきてくれた。

 このティーソーダは、クラフトジンジャーエールにジャスミンティーとライムをそえた飲み物で、気分を優しくリフレッシュ出来るようにと考えて作ったらしい。

 草太さんはその飲み物を「言いにくいことでも思わず言ってしまうかもしれないティーソーダ」と名付けた。

「大さんを見て名付けてみたんだ」と草太さんが言った。

「言いにくいことを言ってしまいたい人や、話して問題を解決していく人と、何も言わないず、自分でじっくり考えて解決していく人もいると思うけどね」と草太さん。



 なんか、あたしに向かって言っているような・・・




 おじいちゃんは、自分で温めたお昼用のご飯を食べていた。
 自分で温めたご飯は格別と、楽しそうに笑っている。

 そして、「ヒャッキンってところは、便利なものが売ってるところなのか?」と、100均のトレーを見ながらおじいちゃんが言った。

 おじいちゃんは歩くことは出来るが、出かけるとなると大変なので、デイサービスや病院くらいしか出かけておらず100均を知らないのだ。

「大ちゃん、食べ終わったら行ってみよう」と椎名が言った。
 そして、二人共、あたしを見ている。



 そろそろ夕方ですが・・・・・
 あたしも一緒に出掛けるのですね・・・
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