第34話

文字数 3,046文字

 コサージュ付きのヘアバンドを付けたヒカルちゃん
 可愛すぎる!

 そして、ハルカさんはビンテージの生地を見て、目を輝かしている
 100均で会った人とは別人のようだ

 これが、大竹さんが言う『きっかけ』だ、きっと!




 ハルカさんとフジやんが、コサージュを見ながら話している。
 「このコサージュ、作りもしっかりしてるし、デザインも可愛い!洋服にも合うけど、着物のときにも可愛いと思う」
「あたしも、そう思うー!このお花を何個も頭に付けたら可愛いですよね」
「うん。あと、帯留めにしてもいいんじゃないかな。いま、ビンテージの洋服や生地が注目されてるもんね」



 ハルカさん、楽しそう!
 良かったよー




「若い人ってすごいわね。わたし、作るのは好きなんだけど、そういうアイデアがね・・・」と向井さん。
 自分の作品を褒められて、うれしそうにしている。

 ハルカさんはコサージュを見つめながら、向井さんに話しかけた。
「これ、売れると思います」
「そう?そうなの?やっぱり、そうなのね。売れるのね・・・。サクラちゃんにも言われてたの。なんか、携帯の中でお店?作ってもらったんだけど、わたしわからなくて・・・」
「え?スマホ、みせてもらっていいですか?」

 それはフリマアプリで、ハルカさんと同じものだった。

 「ここまで出来てるんだったら、あとは写真と案内文、値段をつけるだけだから簡単です」
「えー!わたし、そういうのは・・・。作るのは好きなんだけど、写真が全然だめなの」

 そう言って見せてくれた画像は、どれもブレブレで、まともに写っている写真はなかった。

「なんで、うまく撮れないのかがわからないの。それに、案内文って何を書いたらいいか・・・。ビジネスみたいなの、わたしはできないわ」
「こんなに可愛く出来てるのに、もったいないですよ。・・・ちょっと、いいですか」といいながら、手際よく商品を撮影、案内文など添え、あっという間に完了。

「すごーい!!こう見ると、素敵じゃない!なんか、良いものみたい!」
「良い商品なんです。値段はどうしますか?」
「えー、いくらでもいいの?じゃあねー、えーと、うーん・・・あっ、どうしよう!決められない!!わたし、どうしたらいいの?」

 向井さんは、こういうことが本当に苦手なようだ。
 ハルカさんが試しにと、値段を設定し、あっという間に5点アップした。

「早いわねー。あら、なんか、ポコポコ文字が・・・」
「お気に入りにいれてくれると、通知が来るんですよ。あ!売れた!!」
「えーーーー、ハルカさん、すごい!」
「いえ、私じゃなくて・・・」
 向井さんのコサージュは、あっという間に3点売れてしまった。


「夢みたい!やだー、こんなに嬉しいのね、売れると、ねぇ。こんなに早く売れるなんて思わなかったわ。あっ、やだ、どうすればいいの?これから、どうすればいいの?送るの?どうやって送るの?!」と、焦りまくる向井さんに、ハルカさんはこの後の手順をゆっくり、丁寧に教えている。




 向井さん、不安そうにしてハルカさんをじっと見つめてる
 おそらく、ハルカさんの説明を全然聞けていない
 そんな顔してる

 そして、なぜか口をパクパク動かしてる
 なんだあれ?





 向井さんはハルカさんの説明を遮って、唐突に言った。
「ユニット!・・・ユニットよね?ハルカさん、わたしとユニットを組んでもらえないかしら?」




 ユニットって言いたかったのか!
 向井さんとハルカさんのユニットって、なにか可笑しい
 向井さん、その言葉、どこかで覚えたのね




「可愛い生地だし、思い出もあるから捨てたくないの。でも、サイズがねぇ。昔は痩せてたのよ、信じられないだろうけど本当に痩せてたの。まぁ、痩せてても、おばあちゃんには可愛すぎる柄だから、もう着られないけどね。でも、捨てたくなくてね、それで作ってるだけなの。だから、売ることなんて考えてなかったの。でも、・・・・・売れると嬉しいのね。自分がほめてもらったみたいで!だから、ユニット組んでもらって、ハルカさんに売ってもらって。売上もハルカさんにもらってもらって・・・」
「そんなのだめです!お金は要りません。お世話になったお礼に手伝わせてください」
「そんなのだめよ!ただ手伝うなんて、だめ。どれだけ売れるかわからないけど、ユニット組んでもらって、売れたときには、それをもらってもらって・・・」
「だめです!それでは私、手伝えません」
「手伝うんじゃなくて、ユニットなの。だから、売れたらお金はもらってもらって・・・」
「ユニット組めません」

 二人の話は平行線のまま。
 そこで、椎名が二人の役割や取り分について、提案した。

 ハルカさんの仕事は、サイトの管理から商品の送付までとして、向井さんは作るのみ。
 そして、半分の取り分を提案したが、ハルカさんは首を縦に振らず。
 向井さんも売上金はいらないと、両者譲らず。

 「出会ったばかりですよ。私のこと、信用してくれるのはうれしいんですけど・・・。本当にいいんですか?」とハルカさん。

 すると向井さんが得意げに、「わたしね、人を見る目があるの。良い人と、そうでない人、見分けられるのよ。オレオレも3回も捕まえてるから!良い人って感じで寄ってくるんだけどね、違うのよー。わたしにはわかるの!」と言った。

 それを聞いてハルカさんが泣き出してしまった。

「例えが悪いよ、フミちゃん!」と大竹さんに叱られ、向井さんが「そうよね。ごめんなさい。いい例えがなくて・・・ごめんなさいね、ハルカさん」と一生懸命に謝っている。

「違うんです。・・・嬉しくて」とハルカさんが涙を浮かべながら、でも、シェアハウスにきて、初めて笑った。


 向井さんとハルカさんは、ユニットを組むことになった。
 そして、再度、椎名から商品の売上について提案が。
 向井さん60%、ハルカさん40%とし、別途、ハルカさんがプレゼント用のラッピングを販売。
 これは、100%ハルカさんの取り分ということで、二人とも納得。




 椎名!良くやった!!
 いい提案だ
 あれ?ハルカさん・・・・・




 「仕事の話をしてるとき、ハルカさんは吃音にならないんだな」と椎名。




  そうなのよ!




「そうなんだよ。突発的になった場合は、特に、得意なことに集中してると吃音はでなくなる。吃音を気にしてる暇が心にあると吃音が出てしまうのかもね。安心して、自分のやりたいことが出来るようになれば、でなくなると思うよ」と草太さん。

 向井さんが、恥ずかしそうにハルカさんに話しかけた。
「わたし・・・わたしじゃだめかしら?わたしとユニット組むじゃない。それで、安心できないかしらね?」
「あ、あ、ありがとう・・ございます・・・で、でも・・・」
「でも?・・・なに?」
「で・・でも、やっぱり、・・・私がいると・・いいい、嫌がらせが・・・」

 不安に襲われたハルカさんに向かって、向井さんが満面の笑みで言った。
「それについては、大丈夫よ!」

 それに続き、「そう、大丈夫」と大竹さんも強く頷き、おじいちゃんも「全く持って問題ない」と言った。
 そして、「おととい来やがれ。ね!」と向井さんが2人に目配せをしている。





 ハルカさん
 この人たちは、むしろ望んでいるのです
 危険な目に合うとこを・・・
 そして、感謝状が欲しいみたいなんです
 善意と言うよりも野望なのです





 そんな事を知らないハルカさんは、3人にお礼を言っていた。




 動機は不純だが・・・
 守りたいという気持ちに嘘はないだろう
 だから・・・

 まぁ、いっか!
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