第5話

文字数 1,681文字

 「大ちゃん、わたし達と、一緒に暮らすのよ」
 と突然、向井さんが言った。


 え?向井さん、今なんて?
 なんて、おっしゃいました???





「さくらちゃんと決めてたの。わたしの家で一緒に暮らすって。去年、うちの旦那が死んだでしょ。それで、わたし子供いないから、ひとりっきりでしよ。なんか、どうしたらいいか、わかんなくなっちゃって。そしたら、さくらちゃんが、いろいろ考えてくれたの。」

 おばあちゃんが考えたのは、向井さんの家に、T子、大竹さん、うちのおじいちゃんとおばあちゃんが一緒に住むというもので、おじいちゃんの部屋には、専用のトイレもついているらしい。

 おじいちゃんの部屋になるところは、もともと向井さんの旦那さんの部屋で、病気だった旦那さんが生活しやすいようにリフォームされているとのことだった。

 また、向井さんの家は、家も広いのだが庭も広く、庭は椎名とうちのおばあちゃんで和風モダンな感じにコーディネートしているらしい。

 向井さんは地主なんだとか。
 そして、向井さんの旦那さんの妹がT子で、向井さんの家のお隣の家が、椎名宅。



 幼なじみで、親戚なんて・・・
 なんとまぁ、仲良し
 そして地主・・・、すごい・・・



「姥捨て山を自分たちでつくるしかないんだよ、あたし達は。子供はね、あたし達のために生きてるわけじゃないの。」と大竹さんは、このような内容を繰り返しエンドレスでおじいちゃんに言っている。
 補聴器をおじいちゃんに貸しているので、周りの音が聞こえず、マイペースに話されている様子。


 おじいちゃんは、補聴器があるから聞こえているはずだが、遠い目をして・・・、目をシバシバして・・・
 聞いてるのか???


 家賃は、向井さん家の固定資産税?と光熱費?雑費など考え、月3〜4万円くらいで、食事はそれぞれ。

 いまは、冷凍食品もおいしいし、老人向けの宅配食事サービスがあるし、年金でどうにかまかなえるので、金銭的には家族への負担はないとのこと。

 また、向井さんの親戚に大学生がいるらしく、家賃がない代わりに住み込みで、掃除などをしてるれるらしい。

 お布団も干してくれるんだとか。
 おじいちゃんは、おばあちゃんが死んでから、お布団を干してもらっていなかった。


 そして、家賃以外でこの家に住む条件としては、何かあったときのために、それぞれの家族が週2回、夜寝泊まりすること。

 山崎家、椎名家、大竹家で6日。
 残りの1日は、向井さんの親戚の人が必ず家にいるようにする。

 あと、それぞれのお誕生日にはパーティをするので、お誕生日を迎える人の家族だけは、必ず向井さんの家にくること。



 毎日の食事やおトイレの世話等々、いろんな負担が週2回、夜だけ泊まりに行くのと年1回になる。
 あの二人は反対しないだろう。

 でも、おじいちゃんは、この家から出るわけがない。
 






「わかった」と、おじいちゃんが言った。




 えー!!!前は、あんなにゴネてたのにー






「補聴器、買う」




 えーえーえー!!!




 話はトントン拍子に進んだ。




 が、おかあさんがゴネた。
 週2回のお泊りが嫌らしい。


 お父さんが行くということに決まったが
「なんか、あたしが嫌がってるみたいじゃない」
「仕事が忙しいってことにすればいいだろ」
「忙しいの、実際。」
「だから、いいっていってるだろ」
 と、またケンカ。

 そのあとシーンと静かになる、この空気がつらいー!!!


 結局は、おじいちゃんを向井さんの家に行かせることに決まった。



 おじいちゃんがいてもいなくても、この二人は終わってる・・・

 結婚なんて、するもんじゃない
 この二人を見ていると、そう思う
 あたしは、絶対、結婚などしない!


 でも・・・、一人で生きていけるのか・・・
 株も色んな本を読んで勉強してるが、全然だめだし・・・

 あー、もう考えるのやめよー



 とりあえず一年という期間限定で、老人シェアハウスを開始することになった。

 おじいちゃんの引っ越し準備もあっという間に終わり、補聴器も購入で準備万端。


 シェアハウスの開会式をするとのことで、向井さんから招待状が来た。


 開会式って、体育祭みたい・・・

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