第３話

　はじめて男子の家に来た

　女子の家には、何回か行ったことがある
　


　うー、落ち着かない
　人の家だからなのか、男子の家だからなのか・・・


　あたしなんかに、何か起こるわけがない
　そんなことはわかっているのだが・・・


　落ち着け自分
　あたしは結婚なんかしないんだから、ざわめくでない！










「ばあちゃんの部屋にいて」と椎名がいった。


　椎名の家は、古いけど立派な家で昭和な感じだが、T子の部屋はラブリーでかわいかった。

　壁紙はパステル色、妖精の設定だからか星柄が目立つ。
　そしてベッドの上には天蓋がつるされていて、あたしの部屋なんかより女の子っぽい。






　そんな部屋におばあちゃんが3人、正座している。

　T子をのぞくと、おばあちゃんが2人・・・




　みんながあたしを見て、にこにこしている・・・





「優くんがお部屋を飾ってくれたの」と、T子が話した。


「優くんセンスがいいのよー」と向井さんが言い、

「そう！テイちゃんの髪型も洋服も、全部、優くんが。それを、あたし達がつくってさぁ。優くんがいなかったら、こんな可愛くできないよ。」と大竹さん。



　向井さんというおばあちゃんは、手芸とかが得意なので衣装担当、大竹さんというおばあちゃんは元美容師でヘアメイクを担当しているとのこと。

　向井さんはギンガムチェックのワンピースを着ていてかわいく、大竹さんはきれいな白髪をボブにしていて、かっこいい。
　ふたりとも、おしゃれ。



「テイちゃん、痴呆の一種らしいのね。あと、精神的なものもあるんじゃないかってお医者さんが、ね。」と向井さん。



　痴呆って、認知症のこと？



「テイちゃんはさ、真面目に頑張って働いて、校長先生にまでなって。女で校長先生って本当にすごいことなんだ、あたしたちの時代だと。だから、思うようにさせてあげたほうがいいんじゃないかって、さくらちゃんが。」と大竹さん言った。


「さくらちゃん、突然だったわね。」と向井さんが泣きそうになっていた。

「死ぬときは心筋梗塞でって、さくらちゃんがよく言ってたけど、本当にそれで死んじゃうなんてね。」と大竹さんが





　って、そんなこと言ってたのか！？




「年寄はね、みんなそう思ってんの。一番良いよねぇ。心筋梗塞かクモ膜下、どっちかが良い。だって、ぽっくりが一番いいもん。長患いが一番大変だよ。本人も、家族も。」


　大竹さんはサバサバした感じで話しているが、やっばり寂しそうだった。


「テイちゃんも、施設に入れたほうが良いんだろうけどね。でも、さくらちゃんが1年だけでも、あたしたちでなんとかできないかって・・・」


　T子を3人で分担して見守るマニュアルを、おばあちゃんが作ったと向井さんが教えてくれた。

　実際は、だいたいみんなでお茶をして、ほとんど一緒にいたらしい。

　4人は中学から幼なじみで、思い出話が尽きないらしく、話が止まらないと言っていた。



「それにテイちゃん、防犯にも役立ってるでしょ。今となっては、この町にとって、なくてはならない存在よね。」と向井さんが、嬉しそうにいった。


　以前、小学生の女の子が、車で拉致されそうになっているところにＴ子があらわれ、犯人を捕まえたのだ。



　だが本当は、おばあちゃんたちとT子が散歩中、女の子を車に乗せようとしているのを見て、T子が
「わたしも車に乗る！」と一緒に乗り込もうとし、・・・

　T子は男たちに突き飛ばされ逆上！


　Ｔ子が暴れ騒ぎまくり、警察がかけつけ、犯人が捕まった。

　というのが事実、とおばあちゃんが言っていた。





　T子は犯人を捕まえるのに貢献したということで、警察から表彰された。

　この話はすぐにひろまり、ここ川萌市で知らない者はいない。





　最初は、頭のおかしいおばあちゃんの徘徊？に苦情もあったらしいが、今では人気者だ。

　T子をスマホの待ち受けにすると良いなどのウワサもある。




「T子、お星に帰れるまで、ここでご厄介になっております。それに、ご恩返しもしなきゃね！なにがいい？」




　何かもらえるんじゃなかったけ？その人の特技活かした感じのもの

　でも、妖精だから魔法的なものなのか？





「テイちゃん、それは今度ね。カナちゃん、いま、大ちゃんはどうしてる？」と大竹さん。


　ダイチャン？


「大喜。おじいちゃん。」

「大ちゃんも、幼なじみなのよ。」


「発明・・・してます。」と、あたし。





「じゃあ、いまから、大喜に会いに行くよ」
　と大竹さんが立ち上がった。


　なぜ？！