第37話

文字数 1,960文字

「あなたのためを思って」

 そう言ってくる人って、相手の為ではなく、自分が得するように周りを動かしたいだけの人だと思っていた

 自分が思っていることこそが正しいと、持論を展開するだけの人だと・・・

 だけど、佐藤さんは違う

 さっきっから何度も「あなたのためを思って」を繰り返しているが、あたしの代わりに生け贄になってくれようとしている!
 こんな良い人はいない!!





「山崎さん、椎名君と別れたほうが良いと思うの。勘違いしないでね。私は椎名くんを好きだけど、それで言ってるんじゃないの。あなたには荷が重いんじゃないかな・・・。私はあなたのためを思って言ってるの」

 ありがとうございます
 重いですーーー


「私の方が良いと思うの。椎名君には、ね。椎名君はカッコいいし頭も良いから、付き合いたいと思ってしまうんだろうけど」

 いえいえ、付き合いたくないんですよ

「山崎さんは、ここで諦めたほうが良いんじゃないかな」

 諦めるとかじゃなく、解約したいのです

「山崎さん、私の話聞いてる?」

 聞いてます
 ずっと佐藤さんがお話されてるから・・・

「山崎さん、椎名君のことが相当好きなのね。でもね、私のほうが」

 だから、好きじゃないのよ!
 持論展開系の人って、みんなこうなのだろうか?
 自分が好きだと周りの人間も同じように好きだと思っちゃうんのかなー

「山崎さん、残念だわ。もっと、話のわかる人だと思っていたけど」

 あたしの何を知っているのだ?!
 持論展開系の人って、人の話を聞かないよなー

 それにしても、佐藤さんは椎名がすごく好きなのね
 一生懸命に、別れさせようと頑張っている

 好きというか、執着心の方が強いか?
 突如、許婚の出現によって、うんちマンが恋愛対象になってしまったとか?
 人の物になってしまうのが許せないとか?

 ま、理由は何であれ、こんなに頑張っている佐藤さんが、許嫁になるべきだわね!




「佐藤さん、心配してくれてありがとう」と椎名。


 いつの間に!
 どこから湧いて出たの?



「椎名君、今日、休んでたけど大丈夫?」と可愛らしく話す佐藤さん。
「家の用事で休んだだけだから。優しいんだな佐藤さんは」
「そんなことないよ。普通だと思うけど」
「いや、佐藤さんは山崎とおれの事を心配して、わざわざ話しに来てくれたんだろう?優しいよ」



 うんちマン、佐藤さんにはずいぶん優しく話すのなー
 あたしと話すときと、全然違うんですけどー



「おれは、色々と問題起こすしさ。佐藤さんは、おれには勿体ないよ」
「私は大丈夫なんだけど」
「佐藤さん、おれなんかより、もっと良い人と付き合うべきだよ。優しい人だから、ちゃんとした人と付き合ってほしい」
「あたし優しくなんかないよ」

 佐藤さん、すんごく嬉しそうだな
 好きな人に褒められたんだもん
 そうだよね

「おれなんて、佐藤さんと付き合う資格ないよ」
「そんなことないから・・・」
「そんなことあるんだよ。ほら、やっぱり優しいよ佐藤さん」
「えー、そうかなー」


 佐藤さん、嬉しそうなのはいいんだけど
 なんか、大丈夫かな・・・
 佐藤さん、頑張って!!


「おれさ、山崎のお婆ちゃんから頼まれたんだ、山崎のこと。亡くなる前に。さくらさんっていうんだけど、おれ、すごく世話になってさ。だから、さくらさんとの約束、守りたいんだ」
「椎名君こそ、優しい。でも、私もわかる。優しいからかな?約束を守りたいってことでしょ」
「そう!佐藤さんにはわかってもらえると思ってた」
「約束を守りたい。ただそれだけで、好きとかそういうことじゃないのに、山崎さんのことを・・・うんうん」


 おばあちゃんか!?
 いつもおばあちゃんから、「かなちゃんは大丈夫」って言われてたけど、椎名にあたしのこと頼んでたから大丈夫ってことだったのか!

 それにしても、この展開はまずい!
 負けるな、佐藤さん!!


「椎名君、何かあったら言ってね。いつでも相談に乗るから」と佐藤さん。


 佐藤さん、椎名に丸め込まれてるのに、気づいていないのか?
 佐藤さんを褒め、椎名が振られているような感じにもっていかれてるのがわからないのか?



「山崎さん、椎名君に迷惑かけないようにね」と佐藤さんは、あたしに言って帰っていった。


 うぅぅう・・・
 なんで、こうなってしまうのだ・・・・・

 なんか、あたし椎名にいいように使われてるような・・・

 椎名のお守り的な感じ?
 あっ、ちがう!
 あたしは、椎名にとって『魔除けの札』なんだ
 椎名の魂胆、みたり・・・・・



「おい、いつまでここにいるんだ。勉強するぞ」


 えぇ!おじいちゃんに会いにいただけなのに


「早くこい!」


 対応の差が激しいんですけど・・・

 でも、良かった!
 許婚なんて言っているけど、『魔除けの札』にされてるだけだもんね
 うんちマンにはお世話になってるし、少しの間、許嫁になってやるかー
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