第２０話

　どれくらい先の将来を考えればいいのか？

　あたしは同じ年の子よりも考えてる方だと思う

　一生にかかる金額を予想し、それを株で稼ごうと思ってる


　やみくもにだが・・・
　お金があれば、なんとかなる！
　（株でお金が予想額まで増えてると仮定して）



　でも、親のことはどう考えればいいのか・・・

　介護？？？？？

　ぅくわぁーーーー！！！
　もう、頭が割れてしまうーーーーーー







「おい！お前さっきっから何やってるんだ？」と椎名。




　はっ！
　椎名に送ってもらっていることも忘れ、自分の思考に没頭してし過ぎて歩いてなかった・・・





「歩くか考えるかどっちかにしろ。というか、帰るんだから、とりあえず歩いてくれ」と椎名に言われ、あたしは歩くことに集中した。


　シェアハウスで受験勉強をし、夕飯をいただくのが最近のルーティンになっている。

　 帰りが20時頃になってしまい、夜道の独り歩きは危ないからと椎名が送ってくれるようになった。
　

「集中出来るのは良いことだ。だけど、夜道ではするな。危ないから」と椎名。




　あたしのこと、心配してくれてる？

　椎名って、知れば知るほど良い子よね
　キツイところもあるけど優しくて、頭が良くて、顔も良い
　なのに変態・・・

　なんか、かわいそう




「何だ、その目は？本当に気をつけた方がいいんだぞ。お前、スキだらけだから。もっと周りを見て・・」と言っていたが、話すのをやめた。

　あたしが周りを警戒する感じが気に入らないようだ。

「そんなに立ち止まってキョロキョロしてたら、家につくまで何時間もかかる。もういい。おれが送るんだから、お前は歩くことにだけ集中してくれ」と言って、椎名は歩き出した。




　椎名はお父さんと話してるのかな
　老後のこと・・・

　はっ！また、考えてしまった
　椎名に置いていかれる



「ばあちゃんや父さんには、やりたいこと、どんな老後の過ごし方が良いか聞いた。あと、おれの希望を入れて表にした。そうすると、決めなきゃいけないことや、調べないといけないことが見えてくる。介護サービスは何があるのかとか。ばあちゃんや父さんだけじゃなく、自分だっていつかは介護を受ける側になるし。それから、墓を維持するのか墓仕舞いをした方が良いのかとか・・・」と椎名。


　え？
　自分の介護のことを想定している！？
　中3なのに


　椎名といい、フジやんといい・・・
　すごい！すごすぎる！！

　うちのお父さんなんて、そんなこと絶対考えてない

　いいな、椎名みたいな人がいたら、家族ってものを良い感じに保てるんだろうなぁ






「あとは、母さんの希望が何なのか・・・」






　そうだ
　椎名のお母さんは、家を出たっきりで戻ってないんだった

　椎名みたいな人がいても、だめな場合もあるのか・・・

　本当に家族ってやつは・・・・・

　うちの家族は何も話し合わず、みんなが何を思っているのかわからん
　でも、うっすら何を思っているのか感じている部分もあり・・・

　そんな、こんがらがった状態の家族が話し合ったら、何年かかるのやら

　解決するまでに死んでしまうのでは？





「人はいつか死ぬ。でも、その年数がどれくらいなのかは、わからない。だから、時間は無駄にできない。予測して予定を立てておいたほうが良いに決まってる。大体、22歳くらいから仕事や結婚ってことになるだろ。今のうちに、現時点での家族と話しておいた方がいい」



　自分の介護のこととか考えてるんだから、仕事や結婚のことくらい考えてるよね・・・

　椎名が結婚って、ちょっと意外だな
　今は結婚しない選択肢だってあるのに




「おれは家族を持つ方が、得だと思ってる」と椎名。



　得？
　ポイ活とか、そういうの好きなのね



「一人で生活するより二人以上で生活した方が生活費も折半できるし、役割も分担出来る」と椎名。




　コスパ的に、タイパ的にはそうかもしれないけど、だからといって、それだけの理由で結婚して、家族になるの？

　コスパが良く、タイパも良いかもしれない
　でも・・・・・

　家族って、めんどくさいじゃないですか？！




「おれは家族と、とことん話し合う。どんな家族にしたいか、そして、個人としては何をしたいかとかを決める。そのための予算を決め・・・」



　予算？国会みたいになってない？？
　話し合ったって、希望通りいけるかもわかんないし




「希望通りいかない場合は、また話し合って・・・」



　めっちゃ、時間かかるじゃん
　タイパ良くなくない？
　やっぱり、めんとくさい




「時間をかけたくなるような家族を作らないで、家族でいる意味あるのか？」



　家族を作るって・・・
　家族になるじゃなく、作る？




　椎名は、「お前は、とりあえず受験だ。高校入ってから考えろ」と、あたしの家の玄関前で言い、帰っていった。



　高校でも、お墓は早いと思うんだけど・・・



　はっ！
　あたし、家族持たない派だった！！
　よかった～
　自分、一人で決めれば良いだけたから楽よね

　でも・・・
　現時点では、親という家族がいる


　ぅくわぁーーーー！！！
　やっぱり、頭が割れるーーーーーー




「早く家に入れ！」と遠くから椎名が睨んでいる。
　あたしは、静かに家に入っていった。