第43話

文字数 1,307文字

 9月だが、まだまだ暑い日が続いている。

 スポーツ吹き矢大会の日も暑く、応援団長の康夫さんが熱中症にならないようにと、みんなにスポーツドリンクを渡していた。

 そして、うちのお父さんは、首にする冷却リングをみんなに配っている。





 昨日、冷凍庫に大量の冷却リングが入ってるの見たけど、このためだったのね!!

 それにしても・・・
 うちのおじいちゃんには、応援団が多すぎる!!!

 まるで、全国大会に行ったかのような盛り上がり
 だけと、家から5分くらいで行ける、近所の市民体育館で開催なのよね






 
 この地区では、スポーツ吹き矢の大会は初開催。
 椎名のお父さんが実行委員会のようなのだが、この大会が成功したら、地区対抗戦をやろうとしているらしい。

 大会は青年の部、大人の部、そして、70歳以上のシニアの部にわかれていた。

 ルールとしては、一礼からはじまり、5回矢を吹き、最後に一礼。
 これを5分以内に行い、合計点数の高い人が優勝。

 大会がはじまり、いろんなおじいちゃん達が、吹き矢を吹き出した。

 なかなか真ん中に命中しないおじいちゃん達。
 「真ん中に刺さるのって難しいんだね」とおじいちゃん達を見て、草太さんが言った。

「でも、おじさんは何度やっても、ほぼ真ん中なんだってな。すげぇよな、おじさん。ずっと笑ってて余裕だもんなぁ」と康夫さん。
 それを聞いたお父さんは、嬉しそうに「あざーっす!」と言った。






 おじいちゃんは6番目
 あと少しでおじいちゃんの番だけど、ずっと笑ってる
 やっぱり余裕だから?

 でも・・・・・
 なんか違和感あるのよねー
 






「大さん、何かおかしい・・・。昨日から話ししてないよな」と椎名。





 言われてみれば、何も話してないかも!!
 笑ってるように見えて、顔がひきつってるだけだったのか?




「大ちゃん、大丈夫よね?」と向井さんが不安そうに呟いた。





 ん?どういうこと???





 「大ちゃん、サッカーやってたでしょ。サッカー、誰よりもすごく上手なんだけど、大会になると、あがっちゃって。で、全然動けなくなっちゃってね。だから、いつもすぐに交代させられてたのよね・・・」と向井さんが静かに話した。




 ええ!!!!!
 そんな!!!
 この話を聞いて、応援団のみんなも動揺している





 「練習のときは一番うまいのにさ・・・。年取ったから、そういうのなくなったのかと思ってたけど、やっぱりだめのかね・・・」と遠くを見ながら大竹さんも呟いた。






 あぁあー!そんなー!!!
 あっ、おじいちゃん、なんか小刻みに震えてるー!!





 「大!がんばれー!!」、「大ちゃん、がんばってー!」等々、大ちゃんコールが始まるも、おじいちゃんは余計に震えだした。





 ぁあー、もうだめだー!!!!!






 おじいちゃんは、なんとか一礼をした。
 そして、やっとの事で矢を吹いたが、その矢は的まで届かず。
 応援団のみんなも、動揺を隠せないでいた。





 もう、おわりだー!!!





 そんなとき、後ろの方からとんでもない大きい声で、怒りのこもった野次がとんできた。

 「なにやってんのよ、みっともない!!あがってないで、早くやんなさいよ!!!」

 その声の主は、鉄仮面。
 そう、うちのお母さんだった。
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