第41話

文字数 1,405文字

 まだ夕方なのに、送ってくれるのねー

 送ってくれるのは、椎名の優しさだと思ってたけど・・・
 あたしという、『魔除けの札』を知らしめる為に送ってくれてるんだね、きっと


 それにしても・・・
「あなたのためを思って」を連呼する佐藤さんに対して、見事な対応だった
 佐藤さんを傷つけなかったもんね


 でも、一瞬だけど、なんとも言えない表情してた
 あの表情、昔、見たことがある
 

 あたしが幼稚園に通ってた頃、いつも「ウチに遊びに来ていいよ」って誘ってくれたあの子と同じ表情だった

 誘われて遊びに行くと、なぜかあたしだけ、おもちゃを貸してくれず、意地悪をされ・・・

 小学校3年までそんなことが続いて、遊びに行っても楽しくないし、一人でゴロゴロしてた方が断然楽しいから、「もう行かない」って言ったら・・・
 あの子がびっくりしたような、焦ったような、なんとも言えない表情をしてた

 あたしみたいな人間に断られたて、びっくりしたんだろう

 断られるなんて、まったく思ってなかったろうし、あたしごときで、傷つくのはありえないんだろう・・


 すぐに気持ちを立て直して、何事もなかったように帰っていった
 それから声をかけられることもなくなった

 

 あの頃は、あの子が友達だと思ってたなー
 おばあちゃんに『友達いらない、独りでいい』っていったけど、あの子は友達じゃなかった

 いまは、フジやんという友達、いや!
 あたしにとっては親友がいるからわかる
 あの子は、『同じクラスの子』ってだけだ


 さっき、一瞬だけど、佐藤さんもあの子と同じ顔をしてた

 佐藤さんも、椎名に断られるなんて思ってなかったんだろうな

 そりゃ、そうだよね
 普通は佐藤さんを選ぶよ
 可愛いし、頭いいし、明るいし
 断わられる理由がない!


 あれ?
 隣の椎名が上機嫌に話している
 もしかして、いままで、あたしに話しかけてた?





「え?また、おれの話、聞いてなかったのか?いっつも、そうだよな。隣に人がいるのに、よくそんなに独りになれるよな。その集中力、勉強に使ってほしいよ、まったく!あと、道歩いてるときは、もっと用心しろって言ってるだろ!」



 ぶりぶり怒っている
 うんちマンだけに・・・・・
  イヒヒヒヒヒヒ



「何笑ってんだ!」と椎名は更にぶりぶり怒り、顔が赤くなっていた。



 珍しいなー
 いつも冷静に怒るのに
 こういう一面もあるのねー
 何の話をしてたのだろう???



 ガサッと、後ろでもの音がしたので、振り返ってみたが誰もいなかった。



 もしかして、つけられてる?
 佐藤さん?
 そんなわけないか
 でも、だれかにつけられてるかも
 だって、許嫁の話だって、知らない間にみんな知ってたし・・・




 音がした方を見に行こうとした瞬間、椎名に突然、腕を掴まれた。
 そして、「行くぞ」と言われ、一緒に走った。




 ぎゃー、腕が引きちぎられるーーーー
 椎名ほど、走るの速くないんですけどー
 でも、椎名は真剣な顔して走ってるし、止まることもできない・・・





 やっとのことで、あたしの家に着いた。
 息があがりまくっているあたしに、「大丈夫だ。心配するな」と椎名が言ってきた。





 全然、心配してないんですけどーーー
 だって、狙われてるのは、あたしじゃなく椎名だもんねーーー
 ストーキングされているのは、椎名なのだがーー





 自分のこと心配した方が良いと伝えたいが、息が上がって全然話せなかった。
 そんなあたしを家に入れ、椎名は帰っていった。
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