第33幕・ワイドショー

文字数 1,667文字

 AM 8:40
 杏は,ベットに顔を埋めて,タオルケットにスリスリしながら,いつもとは違う至福のスパイスなのを味わっていた。
 なぜなら,そう,今日は1月13日(月)・成人の日!
 いつもの憂鬱な月曜日の朝とは今日は違う!!
 そう,どれだけ二度寝を楽しんでも怒られない楽しい休日!!!
 (´∀`*)ウフフ(´∀`*)ウフフ……Σ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャー……(≧▽≦) (≧▽≦) (≧▽≦) (≧▽≦) (≧▽≦)…………………………(・∀・) ………………(;・∀・) …………………(;’∀’) ………………………。
 えっ,なぜ,平日でもないのに,背中に強烈なプレッシャーを感じるの。。。。。。。
 理不尽と思いながらも,杏は,スリスリを止め,彼女を押しつぶさんばかりの強烈なプレッシャーの方向に,ゆっくり,ゆっくり,ゆっくりと振り向くと,そこには魔王も顔負けの表情をした結菜が立っていた。

「いつまで寝ているの杏!
 この3連休,夜更かしばかりしていたようだけど,明日から学校なのよ!
 いい加減,生活のリズムを戻しなさい!!
 それとタオルケットで顔をふくのを止めなさいといつも言っているでしょ!!
 誰が,それを洗濯すると思っているの!!!
 それと部屋を掃除しなさいと言っているでしょ!!!!」

 杏は,半ベソの表情で,今日は,楽しい3連休最終日のはずなのに。。。。。。。と思いながら,どうやって魔王様の怒りをなだめようと必死になって考えを巡らしていた。そう,蛇に睨まれた蛙が,どうやってこの危機から逃れようと算段を巡らすように。
 しかし,杏の脳裏に浮かんだ結論は,『いつもの不用意なツイートはダメだ!』だけだった。。。。

 そうしている間にも,結菜は杏との間合いをじりじりと詰めてくる。

 結菜の右手がゆっくり,ゆっくりと振り上げられる。
 杏は唾を飲み込みながらそれを凝視する。

 杏は,心の中で,逃げなくちゃ,逃げろ!!と自ら奮い立たせるが,その時は無慈悲に訪れた。

 ごっち~~ん!!

 そして,いつものように杏は「ごめんなさーぃ」と叫んだ。

 セルゲイは,リビングのソファーに座って,普段は視聴できないワイドナショーを眺めていた。そして,いつもより1時間遅れの『ごめんなさーぃ』を聞き,「今日で3連休も終わりか」とつぶやいた。

 ワイドショーでは,今週末の18日(土)と19日(日)に行われる大学入試センター試験に挑む学生とその教師・保護者の様子を伝えていた。それを見ながら,セルゲイは2年後には杏と漣も受験生かと感慨に浸った。
 そして,セルゲイは,杏のために牛乳を温めよう思いソファーから立ち上がろうとした。
 まさにその時に,ワイドショーの話題が切り替わった。

 ワイドショーの司会者が,いささか大袈裟な口ぶりで切り出した。
『では,次の話題です。
 皆さんは,巷を賑わせている謎の二人の天才日本人をご存知でしょうか?
 経歴不明なこの二人の手による論文が,今,数学界を大きくざわつかせているのです。
 理由は,世紀の問題の一つ,「ナビエ・ストークス方程式の解」の突破口になる可能性があるからです。
 ちなみに,原稿を読んでいる私もサッパリ分かりませんが,これについて,解説して頂くために,専門家にスタジオにお越しいただきました。』

 すると,カメラが振られ,解説パネルの横に立つ専門家が大きく映し出された。

 セルゲイは,何気なく眺めていたテレビに映された専門家を思わず凝視した。そして,「なぜ,あなたがそこに居るのですか?」と,テレビに向かって問いかけていた。

 解説パネルを脇に移動した司会者は,
『東京大学で数学の研究をされている丸田先生です。
 先生,何が凄いのか,どうしてざわついているのか,分かり易く教えてください。
 また,できれば謎の日本人についてもコメントして頂けると助かります。
 よろしくお願いします。』
 と導入した。

 そう,丸田は,セルゲイが漣と杏の論文の迅速解析を依頼した東大チームのリーダーだったのだ。
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