第1幕・連合軍の誕生
文字数 1,127文字
時は西暦2001年。場所は東京某所。ここに、全てのキリスト教宗派の代表団が集結していた。その目的はただ一つ、公然と父なる存在に挑戦してきた忌ま忌ましきテロリスト・数学者達の野望を打ち砕く為である。
議長に選出されたローマカソリックの司祭が席を立ち,会議の開会宣言を行うために演壇に歩を進めた。そして,演壇につくと,彼は両の手で演壇の縁を掴み,全ての代表団に向かって演説を開始した。
「諸君!キリスト教は,誕生した当初から今日に至るまで,幾多の危機,例えばローマ帝国からの迫害と弾圧,東西分裂,十字軍遠征,プロテスタントとイギリス国教会の誕生などを経験してきたが,その度に,不死鳥のごとく,その全てを克服してきた。
それはなぜか?」
一息を付いた議長は,会場を見回しながら演説を続けた。
「それは信徒と教会は,熱い信仰心よるものであったことは,疑いようのない事実であろう。
では,なぜ,キリスト教徒は,クライシスを前にして,その信仰心が揺るがなかったのであろうか?
それはキリスト教徒の心の中に全てを救済する全知全能の父の存在があったためである。大いなる父が必ず救済に訪れると。
つまり,キリスト教が今日まで営々と続いているのは,大いなる父,すなわち全知全能の絶対神の存在こそが,その源になっていると言っても過言ではない。」
議長の弁舌は更に熱を帯び,その両手に力がこもり彼の腕の静脈が浮き出してきた。
そして彼の演説はクライマックスを迎える。
「しかし,今,キリスト教の根幹である全知全能の絶対神の存在を,公然と否定する凶悪なテロリストが現れた。奴らは,数学という武器で,全知全能の絶対神の存在を全力で否定しようと挑戦してくる。しかも,世界中に拡散し,あらゆる方面から攻撃を行う。その在り様は,まさにスズメバチである。ただただ,全知全能の絶対神の存在を否定することのみに注力し,全勢力を傾けている。
この危機的な事態に対して、我々は,長きに渡る対立の歴史を乗り越えて,絶対神を防衛するために教会連合軍の創設が決定された。
本会議は、教会連合軍の陣容を具体化するものである。
出席者各位の活発な議論を期待したい。」
会場は割れんばかりの拍手で包まれた。
そして時は流れ、今は西暦2019年末。
教会連合軍は,勝利を得ることなく,2019年の年末を迎えつつあった。年が明けると,テロリスト共との抗争開始から20年目を迎えることになる。教会連合軍とテロリストとの抗争は,血を流すことなく,ただ,ひたすらじりじりとした一進一退の消耗戦が続けられていた。そう,今,この瞬間も。静かに深く,そして時には熱く。
議長に選出されたローマカソリックの司祭が席を立ち,会議の開会宣言を行うために演壇に歩を進めた。そして,演壇につくと,彼は両の手で演壇の縁を掴み,全ての代表団に向かって演説を開始した。
「諸君!キリスト教は,誕生した当初から今日に至るまで,幾多の危機,例えばローマ帝国からの迫害と弾圧,東西分裂,十字軍遠征,プロテスタントとイギリス国教会の誕生などを経験してきたが,その度に,不死鳥のごとく,その全てを克服してきた。
それはなぜか?」
一息を付いた議長は,会場を見回しながら演説を続けた。
「それは信徒と教会は,熱い信仰心よるものであったことは,疑いようのない事実であろう。
では,なぜ,キリスト教徒は,クライシスを前にして,その信仰心が揺るがなかったのであろうか?
それはキリスト教徒の心の中に全てを救済する全知全能の父の存在があったためである。大いなる父が必ず救済に訪れると。
つまり,キリスト教が今日まで営々と続いているのは,大いなる父,すなわち全知全能の絶対神の存在こそが,その源になっていると言っても過言ではない。」
議長の弁舌は更に熱を帯び,その両手に力がこもり彼の腕の静脈が浮き出してきた。
そして彼の演説はクライマックスを迎える。
「しかし,今,キリスト教の根幹である全知全能の絶対神の存在を,公然と否定する凶悪なテロリストが現れた。奴らは,数学という武器で,全知全能の絶対神の存在を全力で否定しようと挑戦してくる。しかも,世界中に拡散し,あらゆる方面から攻撃を行う。その在り様は,まさにスズメバチである。ただただ,全知全能の絶対神の存在を否定することのみに注力し,全勢力を傾けている。
この危機的な事態に対して、我々は,長きに渡る対立の歴史を乗り越えて,絶対神を防衛するために教会連合軍の創設が決定された。
本会議は、教会連合軍の陣容を具体化するものである。
出席者各位の活発な議論を期待したい。」
会場は割れんばかりの拍手で包まれた。
そして時は流れ、今は西暦2019年末。
教会連合軍は,勝利を得ることなく,2019年の年末を迎えつつあった。年が明けると,テロリスト共との抗争開始から20年目を迎えることになる。教会連合軍とテロリストとの抗争は,血を流すことなく,ただ,ひたすらじりじりとした一進一退の消耗戦が続けられていた。そう,今,この瞬間も。静かに深く,そして時には熱く。