第16幕・杏とミシェル
文字数 1,179文字
招待状が届いた時の食事会は,志緒里の家に美容師さん達を呼んで,ヘアのセットアップとドレスを着付けしてから,先方が手配したリムジンタクシーで会場に向かうのが通例だった。
結菜は,いささか外連味が強いのでは?と感じながらも,儀式とも言えるこの非日常が好きだった。
その一方で,いったい幾ら使っているのかしら?レストランの経営は大丈夫なのかなぁ?など,商社の役員をしている結菜はついつい考えてしまっていた。
一方,杏は,気軽ないつものお店の食事会の方が嬉しいのだが,志緒里ママの凛々しい仕事姿が見られるので嫌いではなかった。それと,最近は,背が伸びてきた漣のスーツ姿が様になってきたなぁとも思っていた。
そんな結菜と杏は,オイラーをキャリーケースに入れて,タクシーで漣の家に向かった。
その途中で,今夜の食事会のスーツを届けるためにセルゲイの職場に立ち寄った。
オフィスには杏が赴いたが,セルゲイはテレビ会議中だった。このため,セルゲイの代わりに,カジュアルウエアを着たミシェルが出てきた。以前見たスーツ姿では気付かなかったが,ミシェルは欧州人らしい胸の持ち主だった。
杏は,ミシェルの胸のサイズに気後れしながらも,彼女に父親のスーツと言付けを託して,オフィスの受付を出た。
ミシェルは杏の背中を見送りながら,「司令はあんな可愛いお嬢さんと毎月食事会とは良いわねぇ」,と呟きため息をついた。
一方,ため息をつかれた杏は,『あのパッキンは,仕事が終わったらバカンスにいくのかしら?』と考えていた。
『しかし,胸がデカかったなぁ。』などと思いながら,杏は自分のささやかな胸を両手で触った。すると,何だか無性に漣に対して腹が立ってきた。いつぞやの寿司屋の一件を志緒里ママにチクってやろうと,心に決めた杏であった。
なお,ミシェルが海外旅行仕様のカジュアルウエアを着ていたのは,フィアンセと成田空港からバリ島に出発する直前に,司令部から緊急召集のコールがあったためである。
結菜と杏をのせたタクシーは,高輪台の志緒里の家に着いた。
志緒里は二人を出迎えに玄関に出てきた。
そして,いつものように,「いらっしゃーい」と声をかけて,二人をハッギュと抱きしめた。
杏はこのお出迎えが昔から好きだったので満面の笑顔である。そして,いつものように,「ただいま志緒里ママ」と言った。
杏は,玄関で,キャリーケースからオイラーを放した。
すると,オイラーは,ここはもう一つの我が家かの如く,漣の部屋に向かって歩きはじめた。その背中は,先に休むぜと言わんばかりだった。
そんな様子を見て,三人は笑った。
「さぁ,テキパキと着付けを始めましょう!」と志緒里が声をかけて,三人は美容師達が待機しているリビングルームに向かった。
結菜は,いささか外連味が強いのでは?と感じながらも,儀式とも言えるこの非日常が好きだった。
その一方で,いったい幾ら使っているのかしら?レストランの経営は大丈夫なのかなぁ?など,商社の役員をしている結菜はついつい考えてしまっていた。
一方,杏は,気軽ないつものお店の食事会の方が嬉しいのだが,志緒里ママの凛々しい仕事姿が見られるので嫌いではなかった。それと,最近は,背が伸びてきた漣のスーツ姿が様になってきたなぁとも思っていた。
そんな結菜と杏は,オイラーをキャリーケースに入れて,タクシーで漣の家に向かった。
その途中で,今夜の食事会のスーツを届けるためにセルゲイの職場に立ち寄った。
オフィスには杏が赴いたが,セルゲイはテレビ会議中だった。このため,セルゲイの代わりに,カジュアルウエアを着たミシェルが出てきた。以前見たスーツ姿では気付かなかったが,ミシェルは欧州人らしい胸の持ち主だった。
杏は,ミシェルの胸のサイズに気後れしながらも,彼女に父親のスーツと言付けを託して,オフィスの受付を出た。
ミシェルは杏の背中を見送りながら,「司令はあんな可愛いお嬢さんと毎月食事会とは良いわねぇ」,と呟きため息をついた。
一方,ため息をつかれた杏は,『あのパッキンは,仕事が終わったらバカンスにいくのかしら?』と考えていた。
『しかし,胸がデカかったなぁ。』などと思いながら,杏は自分のささやかな胸を両手で触った。すると,何だか無性に漣に対して腹が立ってきた。いつぞやの寿司屋の一件を志緒里ママにチクってやろうと,心に決めた杏であった。
なお,ミシェルが海外旅行仕様のカジュアルウエアを着ていたのは,フィアンセと成田空港からバリ島に出発する直前に,司令部から緊急召集のコールがあったためである。
結菜と杏をのせたタクシーは,高輪台の志緒里の家に着いた。
志緒里は二人を出迎えに玄関に出てきた。
そして,いつものように,「いらっしゃーい」と声をかけて,二人をハッギュと抱きしめた。
杏はこのお出迎えが昔から好きだったので満面の笑顔である。そして,いつものように,「ただいま志緒里ママ」と言った。
杏は,玄関で,キャリーケースからオイラーを放した。
すると,オイラーは,ここはもう一つの我が家かの如く,漣の部屋に向かって歩きはじめた。その背中は,先に休むぜと言わんばかりだった。
そんな様子を見て,三人は笑った。
「さぁ,テキパキと着付けを始めましょう!」と志緒里が声をかけて,三人は美容師達が待機しているリビングルームに向かった。