第7幕・杏の事情

文字数 1,438文字

 杏は,女子高の同級生・莉子とともに制服のまま六本木ヒルズに向かって歩いていた。
 校則では,制服のまま繁華街に行くことは禁止されているが,明るいうちなら良いだろうと二人で校則を独自に解釈して,終業式後,二人はお目当てのショップに向かうことにした。

 この辺が,うちの学校の窮屈なところなのよね~。

 今日のショッピングは,新さんのDVDボックスの値段の事前リサーチも兼ねている。

 わたしは,新さんのグッズを買うときは,決してネットショップでは買わないことにしている。なぜなら,お店で商品を自分の手に取って見定めて,それをレジに持っていて,手でお金を渡す過程が好きだから。それが,大好きな新さんグッズならなおのことよねぇ。しかも,ショップで,知らなかったアイテムを発見できれば,その喜びは格別。宝探し,サイコーで~す。

 もっとも,中学まで一緒で,高校から麻布の男子校にいったあいつはこの楽しみを理解出来ないなどとぬかしていたなぁ。

 あいつって,誰かって?

 幼馴染の漣のことだ。

 漣とは産婦人科から中学まで一緒だった幼馴染である。

 なぜ産婦人科?

 それは,ママ達が同じ産婦人科に通っていて,その時に意気投合して,無二の親友になり,その関係で,漣とは中学までず~と一緒だったの。
 高校は,わたしは女子高,漣は男子校に進学したので,会う頻度は減ったが,我が家で漣の話題は事欠かない。

 なぜかって?

 それは,ママ達は,あいつとわたしは結婚する運命だと確信し,結婚式の日どころが孫を抱くことを待ち焦がれているから………………(~_~;)。
 そんな具合で,中学では,わたしは周りの女子からは漣の婚約者とか言われて冷やかされ続けてきたの。まぁ,小学生の時は,ママ達の言葉を真に受けて,漣と結婚するのとか周りに言っていたけどね………………(-_-;)。

 高校が別々になったので,ママ達の熱も少しは冷えるかと思っていたら,ママ達は,『もうすぐ18歳よねぇ』と言いながら,何やらウキウキしながら,色々な準備を始めだしているようだ。
 なんでも,ママ達の関係者(たぶん,政財界の重鎮だと思う)の予定を抑えるには,2年前から準備する必要があるとかないとか,ないとか。

 まさか,漣との新居まで用意しているとかないわよね………………(;’∀’) 。

 ママ達ならあり得そうで怖い。考えないようにしよう…………(;;’∀’)。
 
 でも,わたしはママ達が大好き。だって,二人とも,スペシャルなくらい仕事ができて,奇麗で,優しいから。ママ達との月一のお食事会は最高に楽しいの。付録にお父さん達がついてくるのが玉に瑕だけどね。
 もっとも,あいつはママ達のことをどう考えているか知らないけどね。いい加減,中2病から卒業すればいいのに。黙っていれば,頭が切れて,背も高く,容姿もそこそこなんだから。

 いつの間にか,漣のことを考えて,頬が熱くなってきた自分に気が付き,わたしはブンブンとわたしは頭を振った。
 そうよ,せっかく,莉子と冒険しているのだから,もっと楽しまなくちゃと。

 そんな時,わたしの目に,あり得ない光景が飛び込んできた。
 なんで,蓮とお父さんが,なぜ,お寿司屋から出てくるの?しかも,若い女(しかもパッキン美女)を連れて!この不埒者どもが!!

 わたしはカバンから扇子を取り出して駆け出していた。莉子とカバンを置き去りにして。
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