第37話 奇談散歩 ⑤

文字数 622文字

 お松大権現 徳島県阿南市

 貞享年間、加茂村の庄屋・惣兵衛は不作の村を救うために私有地の五反田地を担保にして、富商の野上三左衛門に借金をしました。惣兵衛は期日前に借金を返済しましたが、道すがらのことで証文を受け取らず、その後に病で急死してしまいます。宗兵衛の妻「お松」は証文を返すように督促しましたが、三左衛門は取り合わず、逆に「死人に口なし」とばかりに金は受け取っていないと言い張って土地を奪い取る始末。
「お松」は奉行の長谷川越前に「恐れながら…」と訴え出ましたが、三左衛門が賄賂を送っていたために、理不尽な裁定しか下されませんでした。思い余った「お松」は最後の手段として藩侯に直訴。しかし、願いは叶わず、直訴の罪で死罪となってしまいました。最期に「お松」は愛猫の玉(三毛)に恨みを伝え、その後、三左衛門と奉行の許に怪猫が現れ、変事怪異が相次いで起こり、ついには両家ともお家断絶したと伝えられています。

 地元では「猫神」さんと呼ばれ親しまれ、受験シーズンには学生さんの合格祈願の参拝も多い。見事、主の恨みを晴らし本懐をとげた「玉」の忠猫ぶりからか、勝訴・必勝を祈願する勝負事の神様としても崇敬されている。
 境内は猫尽くしで、御神紋、御朱印も猫、狛犬ならぬ狛猫さんが参拝者をお出迎え、屋根も上にも魔よけの猫がいる。

 因みに、最初に担保となった「五反田地」は、手を付けようとすると変事が起こるために更地となっており、現在は神社が所有管理している。
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