第33話 奇談散歩 ①
文字数 411文字
豊島区・西方寺
その昔、吉原の花魁・薄雲太夫が可愛がっていた「玉」という猫がおりました。太夫は「玉」を溺愛し、縮緬の首輪に金の鈴をつけ、食事も一緒で片時も離れなかったと言います。しかし、薄雲太夫を抱えていた三浦屋の楼主は太夫の溺愛ぶりに「玉」は魔物で太夫は魅入られているのではないかと疑います。
ある日、太夫が厠に入ろうとすると、「玉」が着物の裾に噛み付いて離れません。振り払おうとするものの、襲い掛からんばかりの形相で睨み返し一歩も引きません。そのただならぬ有様に、駆け付けた楼主が、ついに魔物の本性を現したかと「玉」の首を一刀両断。切られた首は厠の下に飛んで行き、厠の下にいた大蛇に咬みつきました。「玉」は主人に危険を知らせようとしていたのです。忠猫「玉」を不憫に思った薄雲太夫は西方寺にその亡骸を手厚く葬ったと伝えられています。
西方寺が日本堤から巣鴨に移転した現在も西方寺には小さな石造の招き猫が祀られています。
その昔、吉原の花魁・薄雲太夫が可愛がっていた「玉」という猫がおりました。太夫は「玉」を溺愛し、縮緬の首輪に金の鈴をつけ、食事も一緒で片時も離れなかったと言います。しかし、薄雲太夫を抱えていた三浦屋の楼主は太夫の溺愛ぶりに「玉」は魔物で太夫は魅入られているのではないかと疑います。
ある日、太夫が厠に入ろうとすると、「玉」が着物の裾に噛み付いて離れません。振り払おうとするものの、襲い掛からんばかりの形相で睨み返し一歩も引きません。そのただならぬ有様に、駆け付けた楼主が、ついに魔物の本性を現したかと「玉」の首を一刀両断。切られた首は厠の下に飛んで行き、厠の下にいた大蛇に咬みつきました。「玉」は主人に危険を知らせようとしていたのです。忠猫「玉」を不憫に思った薄雲太夫は西方寺にその亡骸を手厚く葬ったと伝えられています。
西方寺が日本堤から巣鴨に移転した現在も西方寺には小さな石造の招き猫が祀られています。