第15話 新人

文字数 604文字

 友人が以前勤務していた病棟には「回復室」と呼ばれる大部屋があると聞いた。
 急変した患者さんや術後の方が入室される部屋で、入室されている方の人数にもよるが、受け持ち看護師は大変多忙な部屋だという。

 ある日、入室者数は多いが、そろそろ落ち着いて大部屋に戻れそうな患者さんが多かった日、新人看護師にその部屋を受け持たせた。
「外回りは私たちが頑張るから」
「回復室デビューがんばれ」
と、緊張でぎくしゃくしている新人を微笑ましく見ながら、ばたばたと夜勤をこなした。
 大きなトラブルもなく、勤務終わりにお茶を飲んでいると、新人看護師がナースラウンジに入ってきた。
「おつかれー」
と、お茶を勧めると、ほっとした顔で、昨夜のことを話始めた。
「深夜に○○さんの検温をしていたら起こしちゃって…」
という。
「そんなの、気にしない気にしない」
というと、
「いえ、そうじゃなくて」
「私の後ろを指さして、××さん…、後ろの人だれ? って言うなり、また寝ちゃって…」
「振り返っても誰もいないし、気になるし、怖いじゃないですかー」
 朝の検温時に聞いても、本人は覚えておらず、もにょもにょしながら勤務終了まで頑張ったのだそうだ。
「寝ぼけてたんじゃないの」
 お茶菓子を勧めながら励ますと、
「でも…、どんな人だか気になりますよね、後ろの人、イケメンだといいなあ」
と、返してきた。

 そんな新人ちゃんは、今は肝っ玉母さんにクラスチェンジされているそうだ。
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