第5話 舌打ち

文字数 545文字

 舌打ち・1
 友人が学生時代にアパートでの体験。
 昼寝をしていたら金縛りにあった。
 時々そのようなことがあるので「疲れているんだろう」と思い、
無理せずそのまま寝ようとしたら、体が上に引き上げられる感覚があった。
 足元に重さを感じ、その重さも胸に上がってきたので、ヤバい、と感じたのだそうだ。
 しかし、
「明日バイトもあるし、レポートだって…」
「忙しい時になにしてくれとんじゃい」
と、恐怖より怒りがこみ上げ、
「ちっ」
 舌打ちしたのだそうだ。
 耳元で申し訳なさそうに、
「すみません…」
と声が聞こえ、体は軽くなった。
「すまなかったら、最初からするなっつーの、」
と友人は語った。

 舌打ち・2
 美人の友人が大学生だった時の話。
 友人たちと東北旅行に出かけ遅い時間に東京駅に着いた。
 すっかり疲れ、重い旅行鞄を抱えて帰りを急いでいると、コート姿の紳士が現れた。
 紳士は彼女の前でコートを広げた。
「あ、変質者だ」
と、思った瞬間、今までの疲労感がどっと出て、
「ちっ」
 舌打ちしてしまった。
 彼はそそくさとコートを合わせると足早に消えた。

「疲れていたから、ため息交じりの舌打ちがでちゃってさあ、悪かったかなぁ」
と彼女は言うが、
 そんなことで傷つくくらい繊細なのに、何故犯罪行為に走るのか?
 変質者心理は複雑だ。
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