第21話 蔵へ

文字数 731文字

 朝ご飯の後、居間で昨日やったカルタをまた始めた。二人はキャッキャッとはしゃぎながら、札を取り合いしている。兄弟のいないシュンは、すこしうらやましくなった。
「朝から元気一杯やな」
 タオルで顔を拭きながら、祖父が入ってきた。
「おはようございます、おじいちゃん」
「おはよう。今日は早起きやないか。いや、起こされただけか」
「シュンちゃんが蔵の中を見たいんやって」
 二杯のお茶と三杯のジュースをお盆にのせて、祖母も入ってきた。
「ほう、蔵をな」
「いいですか?」
「おばあちゃんがいいならええよ。でも、なんで蔵を」
「ええと、夏休みの自由研究に使えそうなものがあるかな、って」
「おお、勉強のためか。そりゃ、ええ。シュウトもアンリも、お兄ちゃんみたいに勉強せなあかんぞ」
「はぁい!」
 思い付きででたらめを並べたが、ほめられて後ろめたさが増したシュンだった。でも、実際自由研究の材料があるかも、と前向きに考えた。
 午前八時半になって、祖母が蔵のカギを開けてくれた。中は暗かったが、電灯が付くようになっていた。スイッチを入れると、とても明るくなった。
「じゃあゆっくりと見なさいね。シュンちゃんは大丈夫とは思うけれど、ものを壊したりしないでね。じゃあおばあちゃんは、病院行ってくるから」
「わかりました、いってらっしゃい」
 祖母が出ていくと、改めて周りを見渡した。蔵の中は、清潔に掃除されている。じめじめした感じがまるでなく、何というかすがすがしい林の中にいるような感じだった。
両側と中央に頑丈そうな棚があって、いろんなものがきちんと整理されている。葛篭や長持、壺や花瓶、きれいに並べられた巻物や書物、それに刀や槍まであった。きっとどこかに鎧もあるに違いない、と思った時、奥から声がした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み