第4話 散歩

文字数 737文字

「晩ご飯前に、ベンの散歩に行こか」
「ちょっと休んでからいきんさいよ。シュンちゃん、疲れとるでしょうに」
「ほれもほうやな。シュン、ジュースでも飲むか」
「いただきます」
 すぐにでかけるのでなくて、シュンはほっとした。
 祖母にジュースを貰い、出されたクッキーを食べた。疲れているせいもあるけれど、とてもおいしかった。食べながら、祖父に質問した。
「いつもこれ位の時間に、ベンの散歩に行くのですか?」
「いいや、時間はバラバラ。犬は毎日同じ時間に散歩したらいかんのよ。その時間になったら散歩に連れて行ってくれると思って、騒ぐけん」
 祖父は大ぶりの湯呑に入ったお茶をゆっくりと飲みながら、教えてくれた。なるほど、そういうものかと感心した。
「前来てから七年か。改めてみると、あんまりにも田舎でびっくりしたろ?」
「お母さんに聞いていたから…」
「これでも、最近コンビニができたりして、便利になったんよ」
 それから祖母に、横浜の家の近況を話した。祖母はうれしそうに話を聞いていた。
「さあ、暗くなる前に散歩に行こか」
 そう言うと祖父は湯呑を置き、リードを持って縁側から庭に下りた。シュンは、あわてて玄関から庭に回った。祖父はすでにベンにリードを取り付け、シュンが来ると散歩に出かけた。
 最初は県道沿いを歩き、中学校を通り越して右に曲がった。
「これ中学校ですか、広いですねえ」
「ああ、わしらが中学を卒業した後、四十年ほど前に町内の中学校が合併してな、一つにまとめられたんよ。見てみ、芝生がすごいやろ」
「すごいですねえ」
「この芝生はな、当時の学生が体育の時間なんかに植えたんやぞ。後輩らみんな大変やったみたいやで」
「考えられません、授業で作業ばかりするなんて」
 少し歩くと、祖父は田んぼの方を指差した。
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