第22話 気になる正体

文字数 674文字

「シュン君、こっち、こっち」
 心臓が止まるほどびっくりしたが、こんなこともあるかな、とは思っていたので、声を出さずに済んだ。気を取り直して奥に行ってみると、一番奥に竈(かまど)が作り付けてあった。竈のある場所は、棚があるところより低くなっていてる。どうして蔵の中に竈があるんだろう、と思っていると、すうっとマドカとカドマが現れた。二人の服装は洋服ではなく、昨日の夜と同じ、白いワンピースのような袖なしの服で、腰のところをひもで縛ってある。マドカは頭に金色に輝く輪をかぶり、カドマは耳のところで髪を束ねて、金色のひもでくくっている。
「も、もしかして、天使?」
「ちがうわよ、バカねぇ。でも人ではないわね」
「座敷童?」
「ちがいます」
「家の守り神様?」
「ちょっとにてるけど、ちがいます。私たち二人は、竈の精霊です。」
「竈の精霊?」
「そう、正確には竈の神様の分身です」
「どういうこと?」
マドカは、上がり框に腰を掛け、シュンに隣に来るよう手招きした。カドマは竈の上に座っている。シュンは少しためらったが、思い切ってマドカの隣に腰かけた。
「この藤原家は、今から千年位前に都からやってきて、ここに屋敷を建てたの。そして、この辺りのリーダーとして存続してきたの。今は農家をやっているけれど、もともとはすごい豪族だったのよ、この家は」
「へえ、由緒ある家なんだ」
「昔はどの家にも竈があって、みんな竈の神様を祀っていたの。きちんと祀られた竈には、私たちのような神様の分身が、守り神として宿るわけ。だから、この竈を造るときに、私たち三人が守り神としてやってきたの」
「三人?」
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