第6話 鬼の像

文字数 787文字

 疲れたせいもあってか、翌朝目が覚めたのは十時前だった。ちょっと熱もあるような感じだが、とりあえず起きた。祖父はもう仕事に出かけていて、祖母が朝食の準備をしてくれた。
「すみません、おばあちゃんも仕事があるのに」
「何言うの、かわいい孫が優先やけん」
 笑いながら、祖母はジャムトーストとゆで卵、ココアの朝食を整えてくれた。
「おじいちゃんやおばあちゃんと、同じのでいいのに」
「そう?じゃあ、明日からご飯とお味噌汁ね。お野菜たっぷりの」
 そう言いながら、祖母は鼻先を持ち上げるように折り曲げた人差し指を当てて、クスクスと笑った。母が笑うときと同じ仕草だった。熱っぽかったけれど祖母に心配をかけまいと、朝食は全部平らげた。心なしか、熱が下がったような気がした。
「おばあちゃん、自転車貸してもらえる?」
「あら、どこ行くの?」
「うん、おじいちゃんに総合公園を教えてもらったから、行ってみようかなって」
「そうなの。なら、道の駅も行ってみるといいわ」
「道の駅?」
「そうよ。県道をまっすぐ下って行くと、森の三角ぼうしって施設があるの」
「そこに何かある?」
「地域の特産品を売ってるんやけど、鬼の像があるわ」
「鬼の像?」
「まあ、行ってみたらわかるけん、行ってごらん」
 シュンは要領を得ないままに、祖母の言うとおり道の駅を目指した。県道を下るってことは、中学校の方に行けばいいんだなと考え、昨日のベンの散歩を思い出し、出発した。
 自転車に乗って五分弱で道の駅に着いた。今日は海の日で祝日だからか、ものすごくにぎわっていた。鬼の像はすぐにわかった。五メートルくらいだろうか、かなり大きい。しかもかなりリアル(?)に、おっかない顔をしていた。金棒片手に、肩に雉が止まっていた。こんなものは、普通かわいらしく造るのでは、とシュンは思った。しかも、肩に雉って。退治した側のメンバーだろ、と突っ込みたくなった。
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