第16話 花火

文字数 831文字

 プチ花火大会は、おおいに盛り上がった。最初は祖父母とシュンが花火をして、シュウトとアンリは拍手するだけだったが、まずシュウトがやりたがり、そしてアンリもやりたがり始めた。
 その辺りで一旦祖母が家に入り、冷えたスイカを切ってきた。さすがにこれは花火より魅力的だったようで、縁側に腰かけて二人は素直にスイカを食べ始めた。シュンも一つ手に取った。
「どうよシュン、田舎は」
「知らないことや初めてのことばかりで、面白いです」
「まだ二日やけんど、何が一番に面白い?」
「まあ、このいとこたちかな」
「ハハハ、それはよかった」
 祖父は満足そうに缶ビールを口にした。本当はもっと楽しい出来事があったのだけれど、ここでは説明できないと思う。ただし、このいとこたちは確かに面白い。シュンもまだまだ子供だが、子供と言う単語が意味するのはこう言うものだ、THEこどもだ、と思った。例えて言うなら、トム・ソーヤーとアン・シャーリーかな、と読書好きなシュンは想像した。
 スイカの中休みも終わり、プチ花火大会の後半が始まった。シュウトもアンリも、おっかなびっくりで花火をつかんでいる。
 きれいな火花を散らして、花火は散ってゆく。いろんな種類があるけれど、火薬が尽きるまで花を散らす、それが花火の役目なんだなあと、ちょっと哲学的とシュンは勝手に照れている。
 シュウトがとなりにやってきた。二本の花火を持っている。導火用の紙が付いているタイプの花火だ。
「お兄ちゃん、一緒にやろう!」
「じゃあ、やろう」
「火、つけるね」
 シュウトは、置いてあるろうそくに花火を近づけた。そして、一本をシュンに手渡した。すぐに火が出始める。
「くしゅん。」
 煙を吸ってしまったのか、シュウトが小さなくしゃみをした。大丈夫かい、と言いかけたとたん、シュンは足元がパァッと明るくなるのを見た。一瞬何が起こったのかわからなかった。
「熱いよ、お兄ちゃん!」
 なんと、シュウトの足が燃えているのだ。シュウトは思わず大声で泣きだした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み