第31話 来し方行く末

文字数 628文字

 合間に、図書館で宿題もした。成績は比較的悪くないシュンだが、数学にやや難があった。マドカは分かり易く丁寧に教えてくれた。やっぱり、神様の分身はすごい。
 毎日、マドカ特製のジュースも飲んだ。気のせいか、体に力がついてきたような気がする。実際連日遊んでも、へばらなくなってきた。自転車でどこへでも出かけられるようになった。
 いとこの二人がやってきた時、二人を加えて五人で遊ぶことがあった。あいにくの雨で、家の中で遊んだ。祖父と祖母には、宇和島まで遊びに来ている横浜の友達だ、と言い訳しておいた。祖父は、シュンもなかなかやるじゃないかと満足そうだった。祖母は、愛想よく挨拶をしたが、ジュースとお菓子を運んできた時、じっとカドマを見つめていた。
 もうひとり、じっとカドマを見つめている。アンリだ。忘れた人とこれから出会う人が、それぞれの思いでカドマを見つめている。
カドマはにっこりと祖母に微笑んだ。祖母はちょっとうろたえて、ジュースとお菓子をテーブルに置いた。
「ありがとう、おばあちゃん」
「い、いいえ、どういたしまして。ゆっくりしていきさいや」
 祖母は、そそくさと出て行った。
「おばあちゃん、思い出したのかな?」
「ヨシエと出会ったころの年齢だからね、カドマは。顔は違うはずだけど、何となくわかっちゃったのかな」
「そういうこともあるんじゃない」
 そう言うと、カドマは不思議そうに見つめている、アンリのほっぺを指先で突っついた。キャッとアンリは両手でほっぺを包んだ。
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