第26話 決めたルール 

文字数 658文字

「ここ愛媛県には、中学二年生の立春の日に少年式という行事を行う習わしがあるの。それでカドマと話し合って、その日を境に見えなくなるようにしよう、て決めたの。よその竈のことは知らないけれど、ここの藤原家の竈は、そういうルールなの」
「でも、ぼくは横浜の人だから関係ないよね。ずっと見えていられるよね」
「だめなのよ。さっき言ったでしょ、藤原家の竈のルールって」
 シュンは愕然とした。中学二年生の立春と言ったら、あと半年しかないじゃないか!せっかく知り合えたのに、あんまりだ、と。
「…じゃあ、マドカちゃんたちに会えるのも、あと半年なんだ」
「そうとは限らないわ」
「そうだよ、アケミのようになるかもよ」
 そうだ!おばさんは、まだマドカやカドマと話をしたりできるんだ。ぼくだってそうに違いない!とシュンは気を取り直した。
「そう言えば、シュウト君やアンリちゃんはどうなの?」
「アンリはひょっとしたら、もうすぐ見えるかもしれない。近くに行くと機嫌が直ったり、何か言いたそうにしたりするもん。やっぱりアケミの娘だよね。楽しみなんだ、ぼく」
「シュウトはまだねえ。八才位で、かしら」
「女の子の方が見え始めが早かったり、ずっと見えていたりすることが多いの?」
「そんなことはないわ。男の子でもずっと見えていたりしたこともあったわよ。陰陽師になった子とかいたし」
「そう、あいつは霊感が飛び抜けてたよ。それと、ヒノメがいたころの江戸時代のあの子、あれはおもしろかったよね」
「ああ、宇和島藩きっての火消侍ね」
 そう言うと、二人は同時にプッと吹き出した。

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