第12話 お泊り

文字数 985文字

晩ご飯が済み、シュンは二人とカルタをして遊んだ。ガシャポンと同じキャラクターのカルタだ。
「ほら、これが初めて出たときは、悪役だったんだぞ。でも人気になったからその後も出てるんだ」
「あ、それは変身するんだぞ。秘密のアイテムで」
「ほら、この三枚は似てるだろう。実は兄弟なんだ」
「こいつとこいつは合体して強くなるんだ」
 このキャラクターがマイナーなころから知っているシュンは、隠れたエピソードを彼なりに一生懸命二人に説明しながら、文字を教えたりしてすごした。二人はわかっているのか、ふうんと言いながらカルタに熱中している。
「シュンちゃん、よく知ってるわねえ」
「小学校の時から見てるから」
「それTⅤ―Tのアニメでしょ、こっちで見られるようになったのは最近だから」
「よく知ってますね、TⅤ―Tなんて」
「あら、おばさん東京にいたのよ、短大の時」
「そうなんですか」
「シュンちゃんのおむつも替えたのよ、わ・た・し」
「ええっ、恥かしいなあ」
「短大出て、そのままこっちへ帰って来ちゃったからね。親のコネで就職できたし、ね」
「へえ」
「おじいちゃんは、いろんなとこに顔が利くのよ、シュンちゃん」
「こら、余計なことは言わんでええ」
 みんな一斉に笑った。おばさんが東京にいたのは知らなかった。
ふと祖母がおばさんに尋ねた。
「お母さんうっかりして連絡せんかったけど、アケミ、シュンちゃんが来ることサトミから連絡あったのかい?」
「うん、まあね」
「ほうかね」
 叔母は例の笑いで答えた。サトミとはシュンの母の名だ。
「あんたら姉妹は、仲ええもんね」
「そうよ、私お姉ちゃん大好き」
そして、午後七時を過ぎた。
「シュウ、アンリ、そろそろ帰るわよ」
「いやだ、泊まってく」
「アンリも泊まってく」
 おばさんは二人を連れて帰ろうとしたが、二人とも泊まっていくといって聞かない。たびたび二人だけで泊まることはあるようで、おばさんも強いて連れて帰ろうとはしなかった。
「いいじゃないの、いとこどうし仲良くなったみたいだし」
「じゃあ、おじいちゃんやおばあちゃん、シュン兄ちゃんにも迷惑かけないようにね。シュンちゃんもお願いね」
 子供たちに注意をして、おばさんは帰っていった。祖父はせっかくだからと、近くのコンビニに花火を買いに行った。祖母はその間に二人を入浴させている。シュンはなんだか、独りになるのは久しぶりなような気がしている。
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