第23話 お役目

文字数 770文字

「そう、竈の神様っていうのは、沖津日子ノ命、沖津比売ノ命、火之迦具土神の三人セットなの。沖津日子ノ命、沖津比売ノ命が竈の神様で、火之迦具土神は火を司る神様なの。沖津日子ノ命、沖津比売ノ命は、須佐之男ノ命様の孫で、叔母様には宇迦之御魂神様がいらっしゃるわ」
「ウカノミタマノカミサマ?」
「わかりやすく言うと、お稲荷さんね」
「三人セットって言ったけど、あと一人はどうしたの?」
「私は沖津比売ノ命の分身で、カドマは沖津日子ノ命の分身。火之迦具土神の分身は、竈に長く火が入らなくなってから、神界に帰って行ったわ、ときどき見廻りに来るけどね。ヒノメって言うんだけれど、いれば昨日みたいな火の事故は起きないわ」
「マドカちゃんたちは、帰らないの?」
「私たちは、竈がなくならない限り、その竈にくくりつけられているの。だからこの竈が壊されない限り、ここにいるの」
「何のためにここにいるの?」
「私たちは、竈の守り神であると同時に、豊穣の神様でもあるの」
「豊穣の神様?」
「そう。この家が豊作になるように導くの。叔母様の宇迦之御魂神様も豊穣の神様だし」
「ぼくみたいに、他の人にも見えるの?」
「この家の、本家に血が近い子供には見え易いわね。見えない子もいるけれど。だいたい八才から十四才まで。それから見えなくなるわね、ほとんどの場合。あと、誰にでも見えるようにすることはできるわ。その方が便利な時も多いから。だって、シュン君一人がローラーコースターに熱中している姿は、ヘンでしょ」
「子供が、大人に話したりしない?」
「話せないわねえ。私たちが見える子は、それを他人に話せないようになってるのよ。だから、とくに騒ぎになったりしていないでしょ、鬼北に子供のお化けが出るとか」
 そう言うと、マドカは鼻先を持ち上げるように折り曲げた人差し指を当ててクスクスと笑った。例の笑いだ。
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