第9話 いとこたち
文字数 1,315文字
「ただいま」
「まあ、長いこと遊んでたのね。おばあちゃん、心配したけん」
祖父の家に戻ると、祖母が心配そうに出迎えた。時計を見ると、午後の四時半になっていた。五時間以上も遊んでいたのか、と自分でも驚いた。
「おなかすいてないの、朝食べたきりでしょ」
「うん、道の駅でお饅頭を買って食べました。だから、あまりすいていないです」
「そう、晩ご飯まで待てる?」
「大丈夫です」
祖母は菓子鉢を持ってきて、これでも食べてなさい、と言って台所に入っていった。中には最中やおせんべいが並んでいる。シュンはおせんべいに手を伸ばした。
祖母のいれてくれた紅茶を飲んでいると、祖父が帰ってきた。
「おお、シュン。寝込んだりはせんかったか」
「うん、おじいちゃん。今日はベンの散歩は?」
「今日は朝のうちにやっといたぞ。シュンがぐっすりと寝てる間にな」
豪快に笑いながら、祖父はそう言った。お風呂に入ったようで、ほんのりと石鹸の香りがする。シュンは少し恥ずかしく思ったが、昨日と今日のワクワクするような出来事を思い出し、あまり気にしないようにした。
「今日明美が来るって言ってたわ、シュンちゃんの顔を見に」
「ほうか、シュンとアケミは、しばらく会っておらんじゃろ。今日は機械の油を触ったけん、先に風呂入ったで」
アケミと言うのは母の妹で、シュンの叔母だ。宇和島に嫁いでいるから祖父母とは往来があるだろうけれど、シュンは小学校一年生以来だから、実に七年ぶりだ。
「ちっちゃいいとこも来るから、遊んでやってや」
「いとこのこと、年賀状位でしか知らないんですけど」
「上のシュウトが七才で一年生、下のアンリは五才で年中なんよ」
小学校一年生と園児か、とシュンは少し戸惑った。小さい子と遊ぶ機会は、今日までなかったからだ。カドマとはいっしょに遊んだけれど、あの子はおとなしくて、お姉さん(?)のマドカの言うことをよく聞いていた。まあ、アニメの話位なら付き合えそうだが、どうなるものかはわからない。するとシュンの戸惑いを見透かしたように、玄関から女の人の声がした。続いて、元気な子供の声も。
「こんにちは、お母さんいる?」
「おじいちゃん、おばあちゃん、きたよ!」
「おじいちゃん、おばあちゃん、おかえり!」
甲高い子供特有の声と、ちょっとハテナな内容と一緒に、男の子と女の子が元気一杯に入ってきた。続いて女の人が一人。かすかに見覚えのあるような、でも印象としては少し太ったかな、とシュンは思った。
「あらあらシュンちゃん、大きくなって。おばさんのこと覚えてる?」
「え、はい、覚えてます」
「もう何年になる?丁度シュウトが産まれたころだったからなあ。ほら、二人共、お兄ちゃんにご挨拶しなさい」
二人は、まさに急に電池が切れたロボットのように、部屋に入ってきたポーズのまま、ピタッと止まっている。そしてシュンの顔を見、母の顔を見て、そのまま背中に隠れてしまった。
「こんにちは、シュウト君、アンリちゃん」
「こんにちは…」
シュンが挨拶すると、二人はさっきとは別人のような消え入りそうな声で、叔母の背中から挨拶をした。シュンは少し考え、ちょっと待っててねと、部屋に帰りデイバッグを探った。
「あ、あった」
「まあ、長いこと遊んでたのね。おばあちゃん、心配したけん」
祖父の家に戻ると、祖母が心配そうに出迎えた。時計を見ると、午後の四時半になっていた。五時間以上も遊んでいたのか、と自分でも驚いた。
「おなかすいてないの、朝食べたきりでしょ」
「うん、道の駅でお饅頭を買って食べました。だから、あまりすいていないです」
「そう、晩ご飯まで待てる?」
「大丈夫です」
祖母は菓子鉢を持ってきて、これでも食べてなさい、と言って台所に入っていった。中には最中やおせんべいが並んでいる。シュンはおせんべいに手を伸ばした。
祖母のいれてくれた紅茶を飲んでいると、祖父が帰ってきた。
「おお、シュン。寝込んだりはせんかったか」
「うん、おじいちゃん。今日はベンの散歩は?」
「今日は朝のうちにやっといたぞ。シュンがぐっすりと寝てる間にな」
豪快に笑いながら、祖父はそう言った。お風呂に入ったようで、ほんのりと石鹸の香りがする。シュンは少し恥ずかしく思ったが、昨日と今日のワクワクするような出来事を思い出し、あまり気にしないようにした。
「今日明美が来るって言ってたわ、シュンちゃんの顔を見に」
「ほうか、シュンとアケミは、しばらく会っておらんじゃろ。今日は機械の油を触ったけん、先に風呂入ったで」
アケミと言うのは母の妹で、シュンの叔母だ。宇和島に嫁いでいるから祖父母とは往来があるだろうけれど、シュンは小学校一年生以来だから、実に七年ぶりだ。
「ちっちゃいいとこも来るから、遊んでやってや」
「いとこのこと、年賀状位でしか知らないんですけど」
「上のシュウトが七才で一年生、下のアンリは五才で年中なんよ」
小学校一年生と園児か、とシュンは少し戸惑った。小さい子と遊ぶ機会は、今日までなかったからだ。カドマとはいっしょに遊んだけれど、あの子はおとなしくて、お姉さん(?)のマドカの言うことをよく聞いていた。まあ、アニメの話位なら付き合えそうだが、どうなるものかはわからない。するとシュンの戸惑いを見透かしたように、玄関から女の人の声がした。続いて、元気な子供の声も。
「こんにちは、お母さんいる?」
「おじいちゃん、おばあちゃん、きたよ!」
「おじいちゃん、おばあちゃん、おかえり!」
甲高い子供特有の声と、ちょっとハテナな内容と一緒に、男の子と女の子が元気一杯に入ってきた。続いて女の人が一人。かすかに見覚えのあるような、でも印象としては少し太ったかな、とシュンは思った。
「あらあらシュンちゃん、大きくなって。おばさんのこと覚えてる?」
「え、はい、覚えてます」
「もう何年になる?丁度シュウトが産まれたころだったからなあ。ほら、二人共、お兄ちゃんにご挨拶しなさい」
二人は、まさに急に電池が切れたロボットのように、部屋に入ってきたポーズのまま、ピタッと止まっている。そしてシュンの顔を見、母の顔を見て、そのまま背中に隠れてしまった。
「こんにちは、シュウト君、アンリちゃん」
「こんにちは…」
シュンが挨拶すると、二人はさっきとは別人のような消え入りそうな声で、叔母の背中から挨拶をした。シュンは少し考え、ちょっと待っててねと、部屋に帰りデイバッグを探った。
「あ、あった」